alchemist_380 のひとりごと

元・水の分析屋さんがブツブツ言います

水はどこにどのくらいあるのか

水はどこにある?

地球上にはおよそ14億立方キロメートル(1.4×109 [km3])の水があると言われています。その 96.5%は海水で、地下水や塩湖なども多くは鹹水(かんすい:塩水のこと)なので、淡水は全体の2.5%しかありません。さらに、その淡水の7割は固体(氷河・氷床)で存在していて、液体の淡水の 98.8%は地下にあります。

地上にあって利用できそうな淡水の内訳がいちばん右の柱。地中氷や永久凍土が 69%を占めています。陸上で容易に使える状態にある液体の水は、地球全体からみると、2.5%の1.2%の31%で 0.025×0.012×0.31=0.000093。つまり、陸上のあらゆる生物は、地球に存在する水の 0.01%にもみたない量の水(バイカル湖を器にして四杯分だそうです)で養われているということです・・・生きとし生けるもの いづれか歌を詠まざりける(*)、って気持ちにもなりますね。

(*) 古今和歌集仮名序を参照。

水の循環はとてつもなく速い

利用できる水はごくわずかであるはずなのに、陸上の生命はそこそこ豊かに育まれています。直接利用できなくても満々と水をたたえた湖もあり、時に洪水を引き起こす河川も少なくない・・・はて、水は余っているのでしょうか?

とてつもなく速い水の循環

上の図に示されたように、大気中の水蒸気量は 103 [km3] の単位で海上・陸上を合わせて 13ですが、総蒸発量と総降水量は 103 [km3/y] (1年あたり、です)の単位で合計 502。つまり、大気中の水蒸気は40分の1年(10日弱)で全部が入れ替わる、という計算になります。決して余っているのではありません。動く量がべらぼうに大きいのです。ただ、これだと、天下を回って入れ替わっているお金はたっぷりあるのに、自分の手許にはほんの少ししかないみたいな話で、ちょっと悲しい(笑)。

ともあれ、私たちはごくわずかの水を奪い合っているはずなのに、とてつもなく速い水の循環のおかげでそこそこ潤沢に利用できております。どこかで大雨が降っても、別なところでそれに釣り合うだけ蒸発します。森林、草原に降った雨や農地に供給された水も、植物や大地を経由してやがては大気中に戻っていきます。そして、私たちは供給される水を何の気なしに利用し、利用した水はあっという間に流れ去ります。飲み物や食べ物に含まれる水はほんの数時間で体外に排出されますし、洗い物やシャワーで使った水はそのまま排水口へ流れ込んでしまいます。その後どうなっているかなど、めったに考えないですね。たまには水の循環のありがたさに思いを致すべきかもしれません。

 

なお、ついでのようで申し訳ないですが、産業革命のずぅっと以前から地球の温度環境がほどよく保たれてきたのは、大気中に存在する水蒸気がもたらす温室効果のおかげです。温室効果ガスや地球温暖化の話題も、いずれ登場させるつもりです。