クマによる人的被害は過去最悪だそうですが、さて「熊害」と書いて何と読みますか?
「のうがい」・・・なわけありません。そんなの、辞書引いても出てきませんよ。
「くまがい」でもありません(ストレートやないかい・・・)。全国の熊谷さん、変なこと言ってゴメンナサイ m(_ _)m。
「たいがい」でもありません。「態」と似ている・・・関係ないです。たいがい(大概)にしなさい!
正解は「ゆうがい」です。確かに、有害獣による被害ということでピッタリです。
なお、ヒグマは漢字で「羆」と書きますが、分解すると「四」「熊」になっていて、江戸っ子なら「シグマ」・・・という眉唾ものの説もあるとか。ともあれ、クマ類をまとめると「熊」。北海道を除くと、各地で出没しているのはツキノワグマ。「熊害」でよいのですね。
科学・教育の番組ではないでしょうけど
\(・_\)それは(/_・)/おいといて、【日刊スポーツ新聞社 によるストーリー】
明治天皇の玄孫で作家の竹田恒泰氏が10月26日放送の読売テレビ「そこまで言って委員会NP」に出演。番組では「新政権でどう変わる? 日本のエネルギーを考える」と題して議論した。
各パネリストに地球温暖化対策は「必要」「不要」の質問があった。竹田氏は「不要」と電子パネルに掲出し、「縄文時代はいまよりもはるかに暑かった。しかも大陸と陸続きが島国になったぐらいですから」と前置きし、「いま考えている海面が何センチ上がったというレベルではない」と主張した。
さすがは竹田さん。「縄文海進」のことも、よぉくご存知なのですね。でも、議論よりも罵り合いが好まれるタイプの番組だけあってか、話の筋は通ってないようです。主張されていることを整理しますと、
(1) 縄文時代は現代よりもはるかに温暖であった
(2) そのせいで海面が上昇して、大陸と陸続きだったが島になった
(3) それに比べると、今の温暖化は大したことはない。(故に、温暖化対策は不要)
といったところだと思います。でもね・・・・・・
約20000年前、「このへん」は大陸と陸続きであった
縄文海進はいまから6-7千年前のこと。その頃の気候については多くの研究がなされており、(1) の主張、6-7千年前は現代よりもはるかに温暖であった(平均気温が 2-3℃高かった)は正しいようです。しかし、(2) の縄文海進の海面上昇は高々 3-5m。「大陸と陸続きが島国になったぐらい」だと言うなら、ずいぶん浅い海峡だったということになってしまいます。モンサンミシェルじゃないんですから。ということで、(3) の結論にたどり着けるかどうか、甚だ怪しいのです。私見ですが、これだけの材料では、あまりに雑なのでマチガイになるでしょう。
大陸と陸続きだった、というのは「旧石器時代」とか「最終氷期」のこと。2万年ほど前に、対馬海峡が存在しなかった時代があった。これは確かなことのようです。

こんな状態ですから、現代の日本列島にあたる「このへん」(i) に、大陸から動植物が侵入してくるのも無理はないですね。最終氷期の終わるころ、日本史の教科書的には縄文時代を迎えるころでしょうが、全球的に気温は上昇傾向となります。極域の氷床が溶けて縮小、その結果、海水が増えて海面が上昇した・・・これが「縄文海進」が生じるまでの大雑把なストーリー。
(i) 大陸と陸続きだった時代のことも「日本史」の教科書に出ているのは、なかなか愉快なことです。最終氷期に「日本」の概念なんかありませんからね。本稿ではとりあえず「このへん」とか書いています。
「縄文海進」へまっしぐら ⇒「縄文海進その後」へ・・・
しかぁし、所詮は大雑把な話。かなり過剰に単純化されています。海面上昇は縄文時代よりもずっと前から続いていました。そこの説明ができていません。それに、気温上昇 → 氷床融解 → 縄文海進 と考えるなら、気温下降 → 氷床発達 → 海退、となるはずですが、実は、縄文海進以降、海面を数メートルも低下させるような氷床の再拡大を示す証拠はありません。つまり、「縄文海進その後」に、寒冷化して氷床が再拡大した結果、海面が低下して現代の海岸線になった、というストーリーは成り立たないのです。
これは、当たり前田のクラッカー。縄文海進は、その後のことまでひっくるめて考えると、氷床融解による海水の増加だけでは説明できないからです。背後にあるのは「氷河性地殻均衡」。気象庁の解説ページにある図を見ながらお読みください:

最終氷期の最盛期には、現代の北米やヨーロッパ大陸には巨大な氷床が発達していました。氷床の下にある地殻は氷床の重みにより沈降し、その影響は地殻の下にあるマントルにもおよんで、マントルは氷床から離れたところへとゆっくりと移動します(左図)。
間氷期に氷床が融解すると、圧迫されていた氷床周辺の地殻が隆起します。一方、氷床の融解によって海水が増えると、氷床から離れた海洋底にかかる重みが増して、海洋底が圧迫されます。その下にあるマントルはゆっくりと陸域の下に移動して、地殻を隆起させます(右図)。
どちらの図でも、マントルは「ゆっくりと」動く。そうです。「氷河性地殻均衡 Glacial Isostatic Adjustment」の実現までには、長い時間がかかるのです。ここが大切なところ。
最終氷期の終わった約19000年前から7000年前までに、氷床は急激に融解し、海水は増加。それに伴って、氷床から遠く離れた場所でも、 海面は年間 1-2cm というものすごい速さで 100m 以上も上昇しました(もちろん「このへん」にも起こったことです)。そして、約7000年前頃に海面が一番高くなった。ここまでは、海水量が一気に増えたために「縄文海進」へまっしぐら、の部分。
一方、その後起こった海退の原因は、氷床の再拡大ではありません。氷床の融解で増加した海水の重みで海洋底が沈降し、海洋底のマントルが陸域の下に移動して、氷床から遠く離れた場所の地殻が隆起し続けたのが原因です(これまた「このへん」にも起こったことです)。陸地が隆起した分、相対的に海面が下がったのです。これが「縄文海進その後」に生じた海退の真相。寒冷化で氷床が再拡大したのではありません。
まとめておくと、最終氷期が終わってからの氷床融解がゆっくりと起こっていれば、海水の増加による海面上昇と陸地の隆起は打ち消し合って、縄文海進のような現象は起こらなかったと考えられます。「海水の増加の速さ」が「氷床から離れた場所の地殻隆起の速さ」を圧倒的に上回ったから縄文海進が起きたのです。
以上を踏まえると・・・
そんなわけで、縄文海進の頃に大陸と陸続きが島国になったぐらいだという主張は、すべて間違っているとまでは言いませんが、あまりに舌足らずでした。したがって、縄文時代は現代よりもずっと温暖だったことを理由にして、それに比べれば今の温暖化は対策をとるほどのことではない、というのは、前提を失った結論。理屈になっていません。声だけでかい人、すっこんでなさい。
元大蔵官僚で経済学者の高橋洋一氏は、「グレタ氏は経済学を勉強する必要がある」と語っていたようですが、「高橋氏のような人は自然科学を勉強する必要がある」と思います。氏が主張しておられる「経済成長なしに失業率を下げることはほぼ不可能」だということくらい、経済学者でなくても、たいていの人は理解しているはずです。経済成長は、地球環境を破壊しながらでも達成しなくてはならない目標なのか、ということを考えていただきたい。そもそも「経済」とは「経世済民」、「世を經(おさ)め、民の苦しみを濟(すく)う」の意である、と松下政経塾のページにも書かれていますね。
地球が千万年以上の長~い時間をかけて地中に埋めて隠した炭素。先のことを考えられない愚か者たちがみつけちゃった。掘り出し始めてたったの300年で、皆様ご承知のこの有様です。反省くらいはしていいと思う、そんな今日この頃です。
今日はここまで~
















