2024/02/24 読売新聞によるストーリーより
東京電力福島第一原子力発電所の処理水海洋放出を巡り、日中両政府が専門家による協議を今年1月に始めていたことがわかった。日本は、科学的根拠に基づく議論を通じて中国側に処理水の安全性を粘り強く訴え、中国による日本産水産物の輸入停止措置の撤廃につなげたい考えだ。
複数の日本政府関係者が明らかにした。1月の初回協議はオンラインで行われた。日本側は外務省のほか、経済産業省や原子力規制庁、東京電力の担当者などがメンバーとして参加した。
周辺海域の海水や魚類などのモニタリング(監視)のあり方などを巡って両国の溝が埋まらず、現状、輸入停止措置の撤廃は見通せていないという。処理水の海洋放出に対する中国国内の反発も踏まえ、「静かな環境で実施されるべきだ」(外務省幹部)として、開催したこと自体公表されなかった。
2025/02/25 北海道新聞 社会面より
東京電力福島第一原発で、処理水の海洋放出が始まって24日、半年となった。東電は昨年11月までに計3回、約2万3400トンの放出を終えており、現在は今月中に予定している4回目の放出に向けた準備を進めている。2023年度は4回で約3万1200トン、24年度は計7回で約5万4600トンを放出する。
福島県漁業組合連合会には「関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない」と約束していたはずですが、反対を押し切る形で放出を開始。その後は既定路線なので、特に断りもなく継続。でも、水産物の輸入停止は痛すぎるので、中国の領海やEEZに放出するわけでもないのに、中国とはこっそり協議。
トリチウム水放出とそのリスク評価については、2023/10/02 と 10/04 に書きました。IAEA に評価してもらったとおりに正しく管理放出するなら、体内被ばくの「可能性はゼロではないが、リスクは極めて小さい」といえます。でもね、国内的にはもう決まったことだから・・・で、対中国になると協議の対象にせざるを得ないのですか? 「中国国内の反発」って言いますが、彼の国からの観光客たちは海産物もいっぱい食べているご様子。彼ら・彼女らは中国国内の人じゃないとでも???
♫ 筋のとおらぬことばかり~ ♫ みっともないからおよしなさい~
今回は久々に海洋の話題、日本海の海流のことを。
間宮海峡埋め立て計画
1920年代のこと、日ソ(i) 両国の科学者・専門家は間宮海峡の埋め立てについて、大真面目で検討していたそうです。確かに、幅7kmほどで深さは10mもない海峡。大きな船は航行できないし、陸続きでもないので交通不便このうえない。地域発展の妨げだ、いっそのこと埋め立ててしまえ・・・ですね。
(i) 日本と「ソ連=ソヴィエト社会主義共和国連邦」のことです。小学生のころ、この長い国名を噛まないで言えたら、いい感じにエラかったと記憶しています。
日本海の出入り口となる海峡の諸元をまとめてみました。宗谷海峡なら軍艦なども航行できるけれど、間宮海峡は・・・と考えると、いらないことになるのでしょう。
ソ連側は、海峡を埋め立てて鉄道を敷くつもりでした。アムール川流域からサハリンにかけての石炭、油田、鉱物、森林などの開発が容易になり、一大工業地帯が作れると考えていたそうです。同時に、アムール川の水を埋立地の南に流すことで土地改良が進むうえ、利用価値が低かった海峡に代わる水路を得て水運も向上という、欲張った計画でした。日本側も資源開発の話には大いに興味があったと想像できます。
結局話は動かず1940年代。小樽新聞(現・北海道新聞)社長で、後に国会議員になる、地崎宇三郎の登場です。地崎は、間宮海峡を埋め立てることで、寒流「リマン海流」が日本海に流れ込むのを封じて、海水温を上昇させるつもりでした。
地崎たちが考えていた日本海には、北からは寒流のリマン海流が、南からは暖流の対馬海流が流れ込んでいて、このリマン海流を閉じ込めてしまえば、日本海に流入するのは暖流だけになり、海水温が上昇すると考えた。海水温が上昇すれば北日本、特に北海道の気候が温暖化して、農業の大規模な改善が見込まれ、北海道は大穀倉地帯になる、とまあ、大風呂敷を広げたと言えばよいでしょうか。
もちろん、「そんなのダメじゃん」なのですが、どうしてダメなのかをはっきりさせておかなくてはなりません。
リマン海流は実在するのか?
どうしてダメかって・・・間宮海峡を通じて日本海に流入する水の量は無視できるからです。リマン海流の源流域は間宮海峡付近でなくてはなりませんが、そこに入ってくる水がほとんどないのに、どうして気候を寒冷にするだけの立派な海流が流れ出せるのか、説明せぃ! ってなります。
気象庁によるほぼ最新の旬平均海流図。「寒流」が元気になりそうな季節なのに、沿海州に沿って南下する流れはありません。もし間宮海峡付近から南下する海流があるのなら、それと釣り合うだけの水が間宮海峡付近に北上しなくてはなりません。図を見ればお分かりいただけるでしょうが、北海道の西方を北上する流れはごく弱いもので、明瞭なリマン海流を形成するほどの輸送量は見込めません(海底から湧き出すとかはナシです)。沿海州付近で冷えた水が分布しているだけじゃないのですか・・・当然、流れてない海流を閉じ込めることはできません。補償流となる対馬暖流が北上することもありません。
ハートの女王さま、頭しかないチェシャ猫の首を刎ねろと命じてもムリでした。ダメなんですよね~
知識を植え付けられる受験生の皆さん
それでもリマン海流は、小学校の4年生か5年生の社会科で登場します。中学2年生で海流について学ぶ時に出てきて、時に高校の入試でも出題されるようです。受験対策みたいな情報としても簡単に見つかりますので、いくつか紹介します。
昨年10月末ころ、「日本海流」「千島海流」にイチャモンをつけようとして掲載した図とほぼ同じですが、リマン海流まで入試に出てくるのだから、よほど大切な知識なのでしょう(元・水の分析屋さんとしては、教科書に出ているからと言ってこんなことで苦労させたり/したりしてはいけないと感じております)。
上図左は教科書・参考書でおなじみかと。右は「オ:親潮」「リ:リマン海流」「ツ:対馬海流」「ク:黒潮」す~と覚えましょうという、元中学校教師さんのオススメでした。もっと踏み込んだ覚え方もありました。私が加工するとせっかくの持ち味をなくして申し訳ないから、ムリヤリ感が半端ない覚え方の部分をまるっと・・・
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まず千島海流(親潮)、これはよくある親は偉いから上でOKです。
あとは親は金持ちだから千の島を持っていると続けます。
子供は親が怖いから親と反対側を馬にのって進みます。
馬に乗って、というのがミソですよ。対島とはならず対馬で覚えられます。
日本海流(黒潮)は南の島から真っ黒に日焼けした人が日本にやってくる、です。
残りの一つ、リマン海流、これがなかなかの曲者でして…
思い浮かばないので北からサラリーマンがやってきた、としました。
そしたら素直な娘さん、リーマン海流が頭にこびりついてしまいました(ガーン)
(アメブロ:「天然ハナちゃんT大への道(仮)」)
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流れてるかどうかも怪しいもんだが・・・の海流の名称ごときで、柔軟なはずの受験生世代の脳みそを痛めつけるのは忍びないです・・・ああ、ブツブツ。
日本海の話、続きありです。