日本語を母語としない人たちが日本語を学ぼうとするとき、ものの数え方がわかりにくくて困るという話をよく耳にします。たとえば、鉛筆などを数えてみましょうか。
一本、二本、三本、四本、五本、六本、七本、八本、九本、十本。
私の読み方は「いっぽん、にほん、さんぼん、よんほん、ごほん、ろっぽん、ななほん、はっぽん、きゅうほん、じっ(i) ぽん」です。
(i) 「十」は現代仮名遣いでは「じゅう」ですが、歴史的仮名遣いだと「じふ」。これでは詰まる音になっても小さい「ゅ」が入る余地などありません、という見解に私は同意します。また、「じっぽん」はおそらく「日本:にっぽん」の古代の発音でもあるかと。容易には捨てがたいです。とはいえ、ポンキッキの唄「いっぽんでもニンジン」においても「じゅっこでもイチゴ」だったと記憶しています。お困りの方(児童生徒に先生を加えて)は多いと思いますので、早く「じゅっぽん」を許容にするべきだと考えています。
そういえば、大相撲やっている最中なので、残念な負けの数でも試しましょう。
一敗、二敗、三敗、四敗、五敗、六敗、七敗、八敗、九敗、十敗。
「じっぱい」はおいといて、今度は「さんぱい」になりませんか? まあ、何の苦もなく読めてしまえば昭和生まれ、でよろしいでしょうか。
あ、もう一つついでですが、一から十までのカウントアップと十から一までのカウントダウン、あなたはどのように数えますか?
いち、に、さん、し、ご、ろく、しち、はち、きゅう、じゅう。
じゅう、きゅう、はち、なな、ろく、ご、よん、さん、に、いち・・・じゃないですか?
「ゼロ」と「れい」も気になってきました。夜寝られないと困るのでこのあたりで。
「周辺の海域よりも水温が高い」流れかどうか、観察してみましょう
最近の図を使いましょう。11/15の海面水温図と50m深海流図を示します。いずれも気象庁提供の図を、元・水の分析屋さんがツギハギして加工したものです。
東シナ海から日本海へと流入する対馬暖流、流速は高々1kt(ii)、流れとしては弱いものですが、山陰から北陸にかけて沖合よりも温かい水が接岸しています(岸寄りほど水温が高い)。つまり、日本海の対馬暖流は「周辺の海域よりも水温が高く、低緯度から高緯度に流れる海流」になっているのです。これは「暖流」というにふさわしいですね。
(ii) 航海、航空の業界でよく使われる速さの単位。1時間で1海里(地球の緯度1分あたりの距離)進む速さ。 1kt = 1852 m h-1 ≒ 0.5144 m s-1。気象の業界でも風速はこの単位がふつう。
一方、本州南岸を流れる黒潮は流速3ktほどの明瞭な流れ。11月中旬、鹿児島県の都井岬付近で接岸しているとみられますが、九州南岸の海面水温は沖合よりも低くなっています(沖の方が水温が高い)。黒潮は、日本近海を流れる代表的な暖流(Wikipedia)とされていますが、実際には「周辺の海域よりも水温が高い」水の流れではないのです。
はてさて。
圧力傾度力とコリオリの力の釣り合いはどうなっているか
対馬暖流も海流です。海流ですが流速は高々1kt。対馬海峡を通過する海水の量も黒潮の25分の1程度と評価されています。流れの仕組みも黒潮とは違っています。
一様な密度の上層と、より大きい密度で一様な下層から成る模式図を作ってみました。本州南岸の黒潮の流れ方は、前回紹介した「地衡流」で概略説明でき、上図の上半分のように、圧力傾度力とコリオリの力がバランスして流れていますが、コリオリの力が沖合側に向いています。対馬暖流の流れ方は、圧力傾度力とコリオリの力のバランスは成立するのですが、コリオリの力が陸地側に向いているところが大きな違いです。
黒潮の流れ方だと、いくら「接岸」しているといっても、温かくて軽い水の下にある低温で重い水が陸地側に存在することになります。対馬暖流の流れ方なら、温かくて軽い水が文字通り「接岸」できるのです。くどいようですが、周囲よりも温かい水が陸地を洗って流れている・・・これを暖流と呼ばなくてどうしますか。ということで、「対馬海流」ではなく「対馬暖流」が適切だと思うわけです。
なお、コリオリの力が陸地側に向く、対馬暖流のような流れは、あまり使われない用語ですが「沿岸境界流(iii)」とよばれます。
(iii) 花輪 (1984) : 沿岸境界流.沿岸海洋研究ノート 第22巻,第1号,67-82.
本日、「津軽暖流」「宗谷暖流」の話には到達できませんでした m(_ _)m。次回こそ。