alchemist_380 のひとりごと

元・水の分析屋さんがブツブツ言います

0, 1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, ... の話 (5)

今回は悲しいお知らせから。

色々な植物の花の花弁の数はフィボナッチ数である、という説がそこそこ広まっております。たとえば「fabcross for エンジニア」2021/5/27 の記事には「ガーベラの花の付き方がフィボナッチ数列に従う理由を解明」とあります。また、「正多面体クラブ」でも 2023/9/24 にNHKの番組(i) を紹介する形ですが、「『花びらの数は(ほぼ)フィボナッチ数』仮説の仕組み解明される!?」ときたものです。解明ですよ、か、い、め、い。でも、何となく両親が、じゃなかった、良心がうずいたのでしょうか、(ほぼ)が付いているのが泣かせますよね。どちらも決して怪しいサイトではないと思いますが、まあ、いろいろありますよ。

(i) この番組には生命科学の権威である 近藤 滋 博士が出演されたそうですが、様々な資料の中から「花びらの数」仮説に有利な情報ばかり引用されていたとのこと。いかにも一般大衆が喜びそうな話題にNHKがのっかったのでしょうね。ブーメランの研究でも名高い 西山 豊 大阪経済大学名誉教授は、近藤博士が原論文の図を意図的に改変したことなど(著作権法に違反)を指摘するとともに、「花びらの数」仮説の背景を深く調査されたうえで「トンデモ説」であると断じておられます(「花びらの数はフィボナッチ数」は本当か? 大阪経大論集 第74巻第6号,125-139.)。

だいたい、「花びらの数はフィボナッチ数」だと学者さんらしき人が主張すれば、「すべて」と書いていなくてもそのように受けとめられる。「その道の専門家」なら当たり前田のクラッカーです。「すべて」だとすれば「反例」が一つでもあれば主張は覆されます(正しくは、一つあれば、です)。できの悪い政治家やお役人なら「ウソは言ってない」で逃げ切ろうとするでしょうが、理科系の学者さんはそれでは済まないはずです。

 

元・水の分析屋さん、昨年の夏のこと、ほぼ見渡す限りのヒマワリ畑を見て感動したのですが、単独で開いていたヒマワリの花も撮影してきました。

虫も撮してきました

あなたはだんだん眠くな~るって言わなくても、タネが並んでいる部分に、右回り・左回りの螺旋がみえてきます。

螺旋が見えるところは本当ですが・・・

この螺旋の数がフィボナッチ数だという説があります。ある研究者さんたちは、ヒマワリの種を観察した結果、「一般にヒマワリの種には、時計回りが21本・反時計回りが34本、時計回りが34本・反時計回りが55本、時計回りが55本・反時計回りが89本、の3通りしか存在しない。」と書いてしまっています(長野県教育情報ネットワーク https://www.nagano-c.ed.jp/ina/B_educationalinfo/2018/kadaikenkyu/H30sugaku.pdf
)。う~ん、この方々もやっちまったかな~。

で、私の写真のヒマワリ、どうやらちょっとフィボナッチ数からは「ずれて」いるようです(数えてると目がしょぼしょぼしてきます・・・)。まあ、花が正しく円形で、その中心からの距離が等しいところにある種の大きさがそろっていれば、右回り・左回りの螺旋の数がフィボナッチ数の組み合わせのとき、最も高密度に種を配置できるはずだとは思います(確かめていませんが)。でもね・・・そんなよい条件に恵まれる花ばかりではないですからね。

植物がフィボナッチ数を知っているとしたら、それは環境に適応するために選ばれた構造だからでしょう。個体の生存とか種の保存に有利にはたらく条件であり、「きわめてそのようになりやすい」と理解したいところです。

「すべて」の話になってなくて、とても残念なお知らせでした。

 

フィボナッチ数列の続き。21, 34, 55, 89, 144, 233, 377, 610, ・・・ ですが、そうじゃなくってですね~

 

「へぇ~」じゃないかも知れませんが

「隣り合ったフィボナッチ数の比は黄金比に近づく」っていうのはどうでしょう。黄金比とは、既出の α =(1+√5)/2 のこと。「n → ∞ のとき Fn+1/Fn → α」という主張です。

この証明はビネの公式から容易に導かれます:

極限に関するよくある操作です

これはビネの公式を知っていてよかった! で楽勝でしたが、知らないと、どこから手をつけようかと、大変なことになりそうですね。

 

次に、フィボナッチ数を一辺とする正方形を、左回りに次々にくっつけてみます:

長方形の縦横の比の行き先が問題

縦に並んだ小さな「1」「1」が見えますかね~ 「2」はやっと見えるか。「3」以降は大丈夫でしょうね。螺旋状の赤い線は、フィボナッチ数を半径とした円の一部をつなげたもので、正確には螺旋ではありません。でも、なんだか、巻き貝のような形になっております。対数螺旋(あるいは等角螺旋)に近いのです。

ところで、上の図をもう一度よく見てください。連続したフィボナッチ数が縦横になっている長方形がいっぱい隠れています。縦横の比がまさに「Fn+1/Fn」になりますから、ちょっと計算して確かめましょう。

極限値も知ってるくせに・・・計算させるんかい

先に書いた α が黄金比の値なのですが、なぜ「黄金比  golden ratio」と呼ばれるのでしょうか。ギリシャ・ローマの昔から使われている「究極の美」を象徴する比。パルテノン神殿サグラダ・ファミリア凱旋門などの歴史的建造物のほか、ミロのヴィーナスやモナ・リザなど、彫刻や絵画にもみられるとされていますが、はて。

私は、1:1.618 が美しいのは、あまりにもよく見かけるために刷り込まれた結果に過ぎない、と思っています(個人の見解です)。だって、ビジネスマンのマストアイテムである名刺の縦横比も(ほぼ)そうなっていますが、名刺そのものを見て美しいと感じたことはない。ダヴィンチのモナリザよりも、やや丸顔のラファエロの小椅子の聖母の方が美しいと思う・・・その他色々です。

また、そもそも、元・水の分析屋さん的には「美しい」よりも「かわいい」の方が上位に来るので・・・

 

今日の最後は、「フィボナッチ数列」と「パスカルの三角形」の不思議な関係。

ちょっと首を傾けながら見てくださいね

フィボナッチ数列は、右側に並んだ数の総和になっています。で、首を左にかしげてみると、パスカルの三角形がみえます。これは「へぇ~」じゃないかな。

 

はい、今日はここまで。