alchemist_380 のひとりごと

元・水の分析屋さんがブツブツ言います

年賀状すませたので「燃焼」について

9/27 の「水はどこにどのくらいあるのか」の中で、地球上には容易に利用できる形で存在する淡水はごくわずかしかないこと、陸上のあらゆる生物は地球全体にある水の 0.01%にもみたない量で養われていることを紹介しました。そのときは柱になったグラフをお見せしましたが、こんな絵はいかがでしょうか:

USGS:United States Geological Survey アメリカ地質調査所 の web サイトの図に拙訳

地球の半径は約6,400 km、全海洋の平均深度は約3,700 m。母の徳と比較された海の深さですが、地球の大きさに比べると3桁違いました。海洋は地球表面にうっすら広がった膜のようなものです。その膜をそーっと剥がすように集めて、地球内部の水、大気中の水まですべてを足しても、上の図で北米大陸のプレーリーに乗っかったボール程度の量です。液体として存在する淡水に限ると、五大湖の南側に描かれた小球くらいしかない。容易に利用できる湖沼や河川にある水は、ジョージア州アトランタの脇にポチッと落ちているしずく程度。

先日紹介した月と地球と太陽の大きさと位置関係、どうして月食や日食が実現できるのか、ちょっと不思議な気持ちになりました。このたびも上の図をみて、たくさんの陸上生物がどうして暮らせているのか、そしてそこかしこで水害が発生するのはどうしてなのか・・・どこか納得いかないのは元・水の分析屋さんくらいか。

 

さて、酸素の発見の話をしたのはだいぶ前のこと。年賀状もすませたことだし、「燃焼」についてお話ししたいと思います。

 

燃焼の三要素

小学校5-6年生くらいで習うやつ、① 可燃物 ② 酸素 ③ 熱源(高温) でしたね。

まずは燃えるものがないとお話になりません。酸素がないと燃えないし、ある程度温度が高い状態が実現できないと燃え始めません。雪ミクはかわいいので簡単に萌えてしまいますが、これは話が違います。

弘前とも連動、函館観光のキャンペーンで~す

よろしかったら冬の函館観光をお楽しみください。ま、\(・_\)それは(/_・)/おいといて。

可燃物があっても酸素がないと燃焼できない。これを確かめるために、使い捨てライターに使われるブタン(butane, C4H10)を水上置換法で瓶の中に集め、そこに火の付いたローソクを入れるという実験が、小学校の授業実践例としてwebで紹介されていました。なるほど、ブタンに囲まれたローソクの炎は消えてしまう一方で、瓶の口からは炎が出て、ブタンが燃えていることが印象づけられる仕組みか。考えるだけでも楽しそうですが、くれぐれも理科室が萌えない、もとい、燃えないように気をつけていただきたいです。

また、熱源がないと燃焼は始まりません。マッチを擦るときには摩擦熱、ガスコンロの点火には圧電素子による電気火花。きっかけは小さくても爆発的な反応が始まります。セルフ式のガソリンスタンドで「静電気除去シートに触れてから」と注意されているのは、静電気で火花を飛ばして貯蔵された燃料に点火しては困るから。大切な指示です。きちんと従わなくてはなりません。くわえタバコはもっとダメです。

※ 理科室で実験器具をひっくり返す人や、なぜか静電気を貯めてしまう人は、あなたの周りに必ず存在します。いくら気をつけても気をつけ過ぎることはありません。

 

簡単そうにみえるけど簡単に実現するわけじゃない

さて、共有結合ができあがっていれば、閉殻あるいはオクテットになっているので、ほかの原子と電子を融通する必要がなくて安定。しかし、共有結合が外れて別なところで再びつくられる(=組み換わる)過程はそれほど簡単ではありません。比較的単純な例として、水素の燃焼=水素と酸素の反応をみましょう。2体積の水素と1体積の酸素の混合気体に火花を飛ばすと爆発的に反応して・・・

「・」は反応中間体のしるし

・・・となるのだそうです。共有結合していた水素分子と酸素分子が切り離されて「H・」「O・」「OH・」といった不安定な反応中間体(i) を作り、(1), (2), (3) 式の反応が一刹那のうちに進みます。3つの式の両辺を足し算して反応中間体をうまいこと消去すると (4) 式。反応の全体が終了するのは、(4) 式に残る反応中間体が消滅するときで(下向き矢印の右の反応による)、総合するとようやく一番下のよく知られた反応式になります。共有結合が組み換わって、2体積の水蒸気ができましたね。

(i) 共有結合している分子よりもはるかに高エネルギー。不安定なことこの上なく、早く安定したいです。そして、(1), (2), (3) 式のように、反応中間体が介在する中、結合が切れたり粒子が衝突したりで生じる各段階の反応を「素反応」といいます。

 

次は、ブタンの燃焼を取り上げると思いそうなものですが、実は、炭素の数が4つもあると手に負えないので、メタン(methane, CH4)で勘弁してください m(_ _)m

C 1つでもすでに手に負えませんでした (°Д°)

・・・いやはや、メタンを燃やすのでさえ100ほどの素反応があるのだそうで・・・もうだめだぁ。上の反応式の「M」は、燃焼が進む環境のどこかにあるもの(器壁とか)です。触媒のように働くのですね。反応する物質と生成される物質の分子はすべて共有結合でできておりますが、爆発によってごくごく短時間のうちに結合の組み替えが起こる。その仕組みは炭素1コのメタンでさえこんなにややこしい。ましてや、ガソリンの燃焼ともなると・・・細かいことは分からなくてもよいので、安定して燃焼させるような工夫はないか、という考え方は当然出てきます。

※ もちろん、現実世界はそのようなイイカゲンな考えの奴らばかりで回ってはいないので、科学の面でも技術の面でもめざましい進歩がありました。

 

・・・というところで一区切りにしましょう。次回は、ガソリンのオクタン価の話で再開です。