気がついたら前回投稿から一週間。なにぶん、わが家の庭でバラが咲き始めたので忙しくて・・・
\(・_\)それは(/_・)/おいといて、「やっちまった」人の言葉から:
ジェフリー・エヴァレスト・ヒントン Geoffrey Everest Hinton
人工知能 AI の生みの親とされるコンピュータ科学および認知心理学の研究者で、ディープ・ラーニングの基礎の開発に大きな寄与があった人。
「私は、AIが人間より賢くなるのは30年から50年先、あるいはもっと先のことだと思っていた。しかし明らかに、私はもうそうは思っていない」と彼はその可能性について述べた。もし自分でなかったとしても、他の誰かが開発していただろう、というのが彼の慰めだという。
ミハイル・ティマフェービッチ・カラシニコフ Mikhail Timofeyevich Kalashnikov
ロシア史上もっとも大量に製造され拡散しているアサルトライフル「AK」の設計者。彼の発明は、軍閥やテロリストの間で愛用され、今日に至るまで他のどのライフルよりも多くの死者を出し続けている。2013年に亡くなったカラシニコフは、生前ガーディアン紙のインタビューに対して「私は、人々が使えて、農民の仕事を助けるような機械、たとえば芝刈り機を発明したかった」と語っていた。
何の役に立つのかと言われて、予算獲得にさえ苦労した基礎研究の成果は、いつの間にか画期的な新技術に応用されます。一般市民の生活に役立っているものは、すでに軍事目的で利用されているとしたものです。言うまでもないことですが、優秀な道具があるとき、悪者がそれを悪事に使うことをどう防ぐかは大変難しい問題です。注意喚起は問題が拡大した後でないと行われませんし、特に、財力を持ち権力を握る人間が善良かつ賢明であることはごくまれです。
ドラえもんの道具だって使い方次第。人を助けることにも、犯罪行為にも役立ちますからね。
黒潮続流の北偏と三陸沖の高水温
2017年9月に始まった黒潮大蛇行は、2024年5月末時点でも絶賛継続中です。
そもそも、黒潮流路が東海沖で南寄りになって大蛇行が始まったのですが、そこから数か月遅れて三陸沖の黒潮続流の北偏が目立つようになりました。こういうのは、やはり連動した現象と考えるものでしょう。
上のグラフは、(一社)漁業情報サービスセンターさんの「おさかなひろば」からいただきました。薄緑の陰は、2017年8月から続いている「黒潮大蛇行」期間です。
ちょっと前、昨年6月末のものではありますが、青い線は黒潮の「最南下緯度」、黒い線は黒潮続流の「最北緯度」です。このたびの黒潮大蛇行が始まってから、青線と黒線がじわじわ離れてゆく傾向にあるようです。つまり、黒潮大蛇行の進行とともに黒潮続流が北偏傾向になっています。さらに、それとともに、赤の破線と緑の線で示される三陸沖における水温偏差(2011-2020年の平均が基準)もプラス傾向となりました。黒潮続流の北偏が、三陸沖の海面水温上昇をもたらしたことは間違いなさそう。
このたびの黒潮大蛇行以前のことをぼんやりと思い返していますが、三陸沖の海面水温は、旬平均とか月平均でみれば、おおむね平年値 ±2℃ 程度の範囲に収まるとしたものでした。±2℃ 程度までは「平年並」の範囲です。黒潮続流から暖水塊が切離して北上すればより高温、南下する親潮水の影響が強ければもっと低温。黒潮続流と親潮前線の間(混合域といいます)の全体を平均すれば、いつだってほぼ平年並みたいなもの・・・な~てユルユルのイメージを抱いておりました。
平年より7℃も高いところも
ああ、それなのにそれなのに。2024年5月中旬の状況をご覧あれ。
気象庁の「旬平均海面水温」のページからもってきた図です。この海域には暖水・冷水が入れ替わり立ち替わり出現しますが、平年値(i) はその水温を30年分(1991年~2020年)平均したもので、当然ながら細かい特徴はならされています。当然ですが、南が高温で北は低温、等温線は東西方向に伸びています。
(i) 海面水温の平年値は、人工衛星、ブイ・船舶による観測データをもとにして解析されています。気象台で観測されたデータによる平年気温などとはちょっと性質が違うことにご注意ください。
しかし、今年の5月中旬という短期間であれば、北偏した黒潮続流の影響が顕著に見えます。高水温の海域は本州東方から北海道南東方まで広がっており、平年より7℃も高いところもあります。上に書いた±2℃ が標準偏差だとすると、その3倍以上! 統計好きな皆さんの大好物「3シグマ」。出現確率 0.3%でございます(ii)・・・ございますが、同様の状況は、2023年4月ころから黒潮続流が北緯39度あたりまで北上するようになって以来、頻発していたように見受けられます。おお、怖い怖い。
(ii) 数値データがガウス分布にしたがっているなら、平均値 μ と最頻値と中央値は一致します(ありがたい性質の一つです)。標準偏差を σ(分散σ2 の正の平方根)と書けば、データが μ±σ の範囲に入る確率は68.27%。μ±2σ の範囲には 95.45%、μ±3σ の範囲には 99.73%が入ります。元・水の分析屋さんとしては、2σ のデータはなかなか捨てられませんが、3σ になればさすがに蹴り飛ばしたくなります。目の前に居ない人のことをこきおろすとき「あの人、3σ 超えてるからね」のようにも使います。自分だってそうなのだけど。
「異常」だとか、あまり言いたくはないですが、気象でも海洋でも「平年」「例年」から大きく外れた現象がしばしば見られます。平年値は、母集団の状態を代表する値であってほしいのですが、現状、どうやらそう考えるわけにはいかないようです。母集団の姿が変わりつつあるのだとしたら・・・・・・最後までは書かないことにしておきます。