alchemist_380 のひとりごと

元・水の分析屋さんがブツブツ言います

黒潮続流はどうなった? (2)

読売新聞によるストーリー より二つ:
将棋の第9期叡王戦五番勝負(不二家主催)の第4局が31日、千葉県柏市で行われ、叡王を保持する藤井聡太竜王(21)(名人、王位、王座、棋王、王将、棋聖)が132手で挑戦者の伊藤匠七段(21)に勝ち、通算2勝2敗でフルセットに持ち込んだ。(5/31)

将棋の第95期棋聖戦五番勝負(産経新聞社主催)の第1局が6日、千葉県木更津市で行われ、棋聖を保持する藤井聡太竜王(21)(名人、王位、叡王、王座、棋王、王将)が90手で挑戦者の山崎隆之八段(43)に先勝した。(6/6)

 

読売新聞では、叡王戦棋聖戦を戦っていても「藤井聡太竜王と書きたくて仕方ないんですね(大笑)。棋聖戦のことを伝えるための記事に注目しましょう。ふつうは以下のようになるものです。

 

産経新聞
千葉県木更津市の龍宮城スパホテル三日月で6日指された「ヒューリック杯第95期棋聖戦五番勝負」(産経新聞社主催)の第1局。挑戦者の山崎隆之八段(43)が午後6時38分、投了し、藤井聡太棋聖(21)=竜王・名人・王位・叡王・王座・棋王・王将=が先勝した。(6/6)

 

毎日新聞
将棋の第95期棋聖戦五番勝負(産経新聞社主催)第1局が6日、千葉県木更津市で指され、藤井聡太棋聖(21)が挑戦者の山崎隆之八段(43)に90手で勝ち、好スタートを切った。(6/6)

 

共同通信社
将棋の第95期棋聖戦5番勝負第1局は6日、千葉県木更津市で指され、後手の藤井聡太棋聖(21)=竜王・名人・王位・叡王・王座・棋王・王将との八冠=が90手で挑戦者の山崎隆之八段(43)を破り先勝、5連覇に向けて白星発進した。(6/6)

 

日刊スポーツ新聞社 によるストーリー:
藤井聡太棋聖竜王・名人・王位・叡王・王座・棋王・王将・=21)が山崎隆之八段(43)の挑戦を初めて受ける、将棋のヒューリック杯第95期棋聖戦5番勝負第1局が6日、千葉県木更津市「龍宮城スパホテル三日月」で行われた。午前9時から始まった対局は相掛かりからリードを奪った藤井が先に仕掛けて押し切り、棋聖戦5連覇と初の永世称号となる「永世棋聖」獲得に向け、好スタートを切った。(6/6)

 

読売新聞社は、他の棋戦が注目されてやっかんでいるのでしょうか。あるいは、自社主催の竜王戦の方がずっと賞金が高い、というマウントなのでしょうか。いずれにしても見苦しいにもほどがある・・・

 

そういえば、靖国神社に「内閣総理大臣たる中曽根康弘が個人として参拝」した例がありましたね。「内閣総理大臣中曽根康弘」と署名しておきながら「個人として参拝した」とは、バカ丸出しの強弁です。まさか、これに倣って、叡王だったり棋聖だったりするけれど、竜王であることに間違いないではないかと強弁しているのか。ウソではない、間違いではない、と言いつつ、積極的にミスリードしてもらおうとする人のなんと多いことか。

 

黒潮続流はちぎれたか

前回は、三陸沖における黒潮続流の北偏傾向と、海面水温の大きな正偏差について書きました。今回は黒潮続流から暖水塊がちぎれたかどうか、について。まずは、黒潮続流の指標と考えられている 100m深水温 15℃の等温線に注目して、次の図をご覧下さい:

100m深水温分布図:2024年5月中旬(左)と5月下旬(右) by 気象庁

気象庁提供の表層水温図は、人工衛星、船舶、ブイ、中層フロートなどの観測データを、海洋大循環の数値モデルの計算結果を用いたデータ同化によって得られたものです。地上天気図で等圧線の引き方に多少の自由度があるのと同様、表層水温場の図でも等温線の引き方に自由度がないなんてことはありません。ほんのちょっとだけですが、自由だ~!

5月中旬の図だと、15℃の線は東経144度付近から北に伸びていて、中心が18℃くらいの暖水は黒潮続流域とつながっているようです。下旬の図では、南側の15℃の線は北緯38度付近までにとどまり、それとは別に、北緯40度・東経145度付近に中心をもつ暖水塊が解析されています。

もう一つ、念のために 50m深の流れの場の解析図も見ておきましょう:

50m深の流れ図:2024年5月中旬(左)と5月下旬(右) by 気象庁

100m深水温15℃の等温線は、流れの強いところとほぼ一致していると言われていますが、うんうん、なるほどです。いや、このくらいの水温であれば、塩分の違いは密度にあまり影響しないので等温線を追っかけてれば、だいたい流れを追えます。で、5月中旬の図だと黒潮続流とその北の強流帯が、つながっているようないないようなの状態ですが、下旬の図でははっきりと切り離された渦が形成されています。

どうやら、5月中旬から下旬にかけて、暖水渦が黒潮続流からちぎれたようですね。あらためて日別の図を観察したのですが、5/20 ~ 5/21 に暖水渦が切離したみたいです。ただし、あくまでも数値モデルを用いた解析での話です。直接観測されたのではありませんから、念のため。

 

エネルギーや物質の輸送も気になる

暖水渦がちぎれたかどうか、それ自体も興味あるテーマだとは思いますが、ほかにもいろいろと気になることがあります。

まず、気象庁のページで紹介されている親潮域の面積。親潮水が分布しているのがあたりまえの海域に、黒潮続流やそこからちぎれてできた暖水塊が存在すれば、親潮水の居場所は奪われて、その占有面積は小さくなります。

親潮の面積の時系列図(by 気象庁

ここでいう親潮の面積は、東経141度~148度、北緯43度以南における、100m深水温が5゚C以下の領域の面積です。赤い線が解析されたものですけれど実況値。黄色の線が統計期間(1993-2017年)の平均。濃い青はほぼ 1σ の変動幅、薄い青は出現確率80%くらいの範囲と思ってください。

2022年の夏以降、親潮の面積は「平年よりかなり小さい」状態が続いていました。2024年に入っても親潮が威張ってくる様子はないままです。どちらかというと、親潮がどうであるかではなくて、黒潮続流や暖水塊が三陸沖の状況を支配したと言えるでしょう。ふつうなら親潮水の影響が及ぶはずの海域で、黒潮続流とその仲間が幅を利かせているわけです。

しかし、親潮水の影響が弱いと思われる状況下にもかかわらず、東カムチャッカ海流出身の「カレニア・セリフォルミス Karenia selliformis」による赤潮で、道東域を中心に大きな漁業被害が発生したのは、記憶に新しいところかと思います。なんでなんだろう。

元・水の分析屋さんも、昨年 11/6 に、混合域は熱と物質のやりとりが進行中の海域であり、溶存酸素も栄養塩も豊かな親潮水と、プランクトンの成育に適した水温をもたらす黒潮水が共存し、二つの水塊の間の性質を持つ水も存在するのだと述べました。これまで経験がないくらいに混合域が小さい状況です。熱エネルギーだけでなく、溶存酸素、栄養塩類、微量金属、さまざまな物質の輸送についても、何が起こっているのかを知りたいと思います。

何にしても、観測しないと分かりませんよ。