昨年末(2023/12/08)、原子の K, L, M, N... 殻の定員が 2, 8, 18, 32... だとか書いたのですが、これは主量子数を n とすれば定員が 2n2 という関係。「すべての n に対して○○が成り立つ」ようなことを考えていたら、数学的帰納法の話をしたくなっちゃって。そして、数学的帰納法を語るなら自然数を構成する「ペアノの公理」を紹介しなきゃあと。元・水の分析屋さんの頭の中ではそのようにつながっているのですが、唐突でしたかねぇ。申し訳ないけど、私の勝手、気まぐれです。
さて、今回は、数学的帰納法で証明しましょう、の例題になる三角数と四角数の話から。
三角数、四角数で数学的帰納法
下図のように、点を正n角形に並べたときの点の総数になる数を「n角数」といいます(もちろん「点」の代わりにおはじきでもいいです)。
具体的に書き出してみる:
三角数: 1, 3, 6, 10, 15, 21, ...
四角数: 1, 4, 9, 16, 25, 36, ...
n番目の三角数は、1からnまでの自然数の和。n番目の四角数は、1からn番目までの奇数の和。したがって、Σ 記号を使って表現してみたものの、 Tr(n), Sq(n) は n の2次式になります(平面上に●を並べているからには2次でないと)。
図を見れば、三角数は台形の面積の公式で出てきそうな気がしてくると思います。上底 a、下底 b、高さを h と書くと S = (a+b)×h÷2 でしたね。最上段 a=1, 最下段 b=n, 段数 h=n とすればそのまんま「公式」になってしまいます。昭和生まれには、積み上げた米俵の数を求める「俵算」としておなじみのもの(江戸時代の塵劫記にもあったはず)。もう一つの四角数は、なんだなるほど、平方数のことでした。
さて、上に示した n の式を数学的帰納法で証明せよ、というのは、ありそうな練習問題です。三角数は俵算の公式でよしとして、四角数の方だけやってみましょう。
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示したい命題は P(n) : 1+3+5+・・・+(2n-1) = n2 です。
○ P(1) : 1 = 12 なので成立
○ P(k) = 1+3+5+・・・+(2k-1) = k2 が成り立つとすると、
P(k+1) =1+3+5+・・・+(2k-1) +[2(k+1)-1] ※ 下線部分は k2
= k2 + 2k + 1 ※ [ ] を外して計算
= (k+1)2 ※ よく知っている因数分解
P(k+1) =1+3+5+・・・+(2k-1) +[2(k+1)-1] = (k+1)2 も成り立つ
数学的帰納法により、P(n) は任意の自然数 n について成立する。 Q. E. D. (i)
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(i) DAIGO 風に「Question Eいい感じで Dできた」ってやりたいのですが、本当は、ラテン語の Quod Erat Demonstrandum (英語で which was to be demonstrated の意)の省略形。「これが示されるべきことであった」→「証明終わり」です。
もう一つ、計算問題です。連続する三角数の和は四角数になります。
1+3=4, 3+6=9, 6+10=16, 10+15=25, ・・・
Tr(n), Sq(n) は分かっていますから、もう数学的帰納法はいりません。Tr(n) の式に n=k と n=k+1 を作って計算すればそれでよい。
練習問題ひとひねり
すべての自然数 n について「P(n) : 1000n + (-1)n-1 は 11の倍数である」これを数学的帰納法で証明しましょう。
まず、n=1 のとき、 P(1): 1000 +(-1)0 = 1001 = 11・91 で成立する
次に、n=k のとき、1000k + (-1)k-1 = 11m (m は整数)と書けると仮定する
( ⇒ 1000k = 11m + (-1)k となる、符号と指数に注意して!)
n=k+1 のとき、
1000k+1 + (-1)k = 1000・1000k + (-1)k
= 1000・ [11m + (-1)k ] + (-1)k
= 1000・11m + 1000・(-1)k + (-1)k ※ (-1)k が 1001 コになった!
= 11・ [1000m - 91・(-1)k ]
[ ] の中は整数なので n=k+1 のときも 11の倍数になる。
以上、数学的帰納法により、
すべての自然数 n について 1000n + (-1)n-1 は 11の倍数である。 Q. E. D.
※ 計算に強い人なら知っているかも、11の倍数の見分け方のひとつがこの事実から導かれます。また、91 = 7×13 なので、7, 13の倍数の見分け方にも応用できますね~ ・・・・・・ 7はまだしも、13の倍数かどうかなんて見分けようとは思わないか~ 電卓もってこ~い!
余談ですが「三角形で四角数」
試験問題でよくあるパターンですが、三角形を見せておきながら実は四角数、というのをご覧いただきましょう。中学入試で出題されそうな気がします。
上のような図で、N段目のどこかの数字を答えさせる問題が出るんじゃないかな、と思うわけです。
よく見ると、各段右端の三角形に入る数字は四角数(平方数)。N段目の右端は N2 になりますね。N段目までの合計を求めよ、になると、これは最後の数が四角数だけど 1から N2 までの自然数の和、三角数を使う問題です。
ひっかからないように、問題をよく読んで!
さよなら三角 また来て四角。四角は豆腐 豆腐は白い 白いはウサギ ウサギは跳ねる 跳ねるはカエル カエルはみどり みどりは柳 柳はゆれる ゆれるは幽霊 幽霊は消える 消えるは電気 電気は光る 光るはオヤジのハゲ頭 (ii)
Q. E. D.
(ii) 地域性もあり、時代によっても変化があるらしいです。とにかく、オヤジのハゲ頭が光るところまで到達しないとおうちに帰れません。
次回は、海の話に戻って「ブロッカーのコンベアベルト」について。