alchemist_380 のひとりごと

元・水の分析屋さんがブツブツ言います

低気圧は台風並みの勢力のまま・・・

22日午前3時、日本のはるか南、マリアナ諸島付近の海上で、熱帯低気圧台風10号に変わりました(UPGRADED FROM TD と書かれています)。アジア名は「サンサン」。香港提案の 'SHANSHAN'、女性の名前だそうで。発生時の中心気圧は 1002hPa、中心付近の最大風速は 18m/s でしたが、今日午前9時には、中心気圧 985hPa、最大風速も 30m/s となっています。急成長です。

(左)22日午前3時の天気図 (右)23日午前9時時点の進路予想図

進路予想を見ると、27日(火)ころに「強い」台風として日本列島に接近・上陸の見込み。また、類似の進路をとった台風として、2018年の21号、「関空台風」(i) があげられています。予想される進路は、ジワジワと東寄りになりつつありますが、大雨、強風、河川の氾濫、高波・高潮(一応小潮の時期ではありますが)。何が起こるか分かりません。厳重な警戒が必要です。

(i) 2018年台風21号は、9月4日に徳島県南部に上陸。その後、紀伊水道を通って兵庫県神戸市に再上陸しました。そのときの中心気圧は 950hPa。4日の関西空港の最大風速は 46.5m/s、最大瞬間風速は58.1m/s。想像を絶する暴風です。近くで停泊していたタンカーが風に流されて関西国際空港の連絡橋に衝突したため、橋が通れなくなり、国際空港が一時的とはいえ孤立してしまいました。

なお、こういう時こそ「フェイク」「デマ」の横行にご注意。信頼できる情報源から発せられた、できるだけ最新の情報をご利用いただけますように。

 

さて、15日に「台風は衰えて温帯低気圧に変わりました」のことをちょっとだけ書いたのですが、今回はその続き、「衰えた」台風が「強力な温帯低気圧」となる話を。

 

軽く復習から始めましょう

台風は、熱帯低気圧であって、かつ、中心付近の最大風速が 34kt 以上のもの。台風が消滅する=台風でなくなるのには、二通りが考えられます:

(1)熱帯低気圧のまま、最大風速が 34kt 未満になる

(2)熱帯低気圧の構造を失って、温帯低気圧に変わる

どちらにしても発生のときと同じく、人間が判断するのでその時刻もピタッと決まるのでした。

そして、(1)であれば最大風速が小さくなったことは明白ですが、(2)の場合は簡単ではない。台風と温帯低気圧、その違いを見極めておきたいところです。

ちょっと古いのですが、関空台風よりは新しい、2020年の台風10号と、そこから変わった温帯低気圧のある天気図をご覧下さい。

等圧線が混み合い始めているあたりに赤いをかぶせてみました

2020年の台風10号「ハイシェン HAISHEN」(中国語の「海神」から)は、九州の西をかすめて朝鮮半島に上陸、その後中国東北部温帯低気圧に変わりました。図中、等圧線が混み合い始めているあたり、まあ、強い風が吹きそうな領域に赤いをかぶせてみました。

台風だと、中心に近づくほど同心円状の等圧線間隔が狭くなっているのに、温帯低気圧になった後の赤いの領域内の等圧線は、中心までおおむね等間隔で並んでいます。そうです、台風は中心付近で急に気圧が下がって風も強まりますが、温帯低気圧は中心近くで急に気圧が下がるわけではないのです。でも、温帯低気圧に変わったからといって、強風域が小さくなるわけではないことも分かりますね。

 

台風で非常に強い風が吹く領域は中心付近にある

台風の中心付近の気圧と風速の分布の模式図を示します(どこかの大学の教材から頂戴したものです m(_ _)m)。

風の強い領域が台風の中心をとりまき、中心のすぐそばは弱風になっている

1000hPa の等圧線が中心から 150~200kmにあって、中心付近の最大風速が 45m/s という立派な台風。右の気圧分布の図は、地上天気図の台風を直線で切った断面を想像すれば理解できるでしょう。左に示された風速の分布、中心から 100km くらい離れたところにピークをもつ強風領域があって、中心のすぐそばは「台風の目」、弱風になっています。ついでながら、図中には「進行方向左側(右側)」と書かれているので、「可航半円」と「危険半円」も説明したかったのだろうと思われます。

台風の目、8/13 に掲載した図には「積乱雲がなく風が弱い。ときには雲がまったくなく晴れていることもある。」との解説があります。台風の中心に吹き込んでくる風の行く先は上空しかなく(ii)(だから地上の風は弱い)、目の中にはらせん状の上昇気流が生じます。もちろん、目から離れるとたちまち強い風が吹き荒れる領域に入ります。

(ii) 地上天気図に現れている台風や温帯低気圧には、反時計回りで風が吹き込んでいます。風は空気の流れ。入ってくるばかりでは困りますが、地表・海面よりも下には行き場所がなくて、 出て行くには上空しかあいてない(∴ 上昇気流が生じる)。こういう収支は、観測事実があるので明快に説明できます。一方、あちこちで飛び交う裏金の場合は、観測事実が当事者、秘書、政党の幹部らによって隠されるので、収支が合わないのが当たり前としたものです。観測事実は大切です。

 

まとめにもなっていませんが:

台風の場合は非常に強い風が吹く領域は中心付近に限られていますが、温帯低気圧の場合は(非常に)強い風が吹く領域が広いことに注意が必要です。温帯低気圧に変わっても油断は禁物です。また、海上警報についていえば、台風によって最大風速 64kt 以上なら「海上台風警報 TYPHOON WARNING」になりますが、温帯低気圧に変わっても最大風速 48kt 以上が予想されれば「海上暴風警報 STORM WARNING」。そして、温帯低気圧なら 64kt 以上の風は吹かない、なんてことは一切言えませんから、念のため。