台風は、海面水温が 26.5~27.0℃ 以上の海域で発生しやすく、発達しやすい。テレビの台風関連のニュースでは、特に、27.0℃ 以上という説明を耳タコになるほど聞かされてきました。台風のエネルギー源は、水蒸気が凝結して雲を作るときに放出する熱で、水蒸気は海から受け取るに決まっていますから、その説明、間違いではないです。
でも、海面からエネルギーをもらったら、その分海面水温は下がるはず。それに、十数メートルの風が吹いていれば、海面だけではなくそこそこの深さまでかき回されて、下層の水と混じってしまいます。すると、表層の水温が下がって海面でも 27℃ を割り込む可能性が高い。つまり、台風の発生・発達には、「海面」水温が高いだけでは条件が足りません。「ある程度の深さまで」27.0℃ くらい以上の暖水が分布していること、某サイトの書き方では「高水温の海洋混合層が十分に深い(約 50m 以上)」ことも付け加えておいて下さい。
分かりやすさを目指すと正確さを欠いてしまう典型例なのかも知れません。
台風の名前と分類について
台風の名前、ここのところ目にする機会が増えていますが「台風第5号(マリア)」「台風第7号(アンピル)」のように表示されています。「台風第○○号」というのは気象庁による台風番号。()の中は「アジア名」のカタカナ表記です。
台風番号は、毎年1月1日を区切りとして、台風の発生順に割り振るものです。験担ぎで9や13を飛ばすことはできません。また、暦年での番号と決まっているので、年末に発生した台風が12月31日以降もそのまま残っていても(越年台風、たま~にあるようです)、1月1日以降に発生した最初の台風が新年「第1号」になります。
官公庁による報道発表資料などでは元号も用いて「令和6年台風第7号」のように書いているはずですが、そもそも序数なのだから「号」で呼ぶなら「第」はいらないとしたもの。報道関係では「第」を付けないのがふつうみたいです。ドラゴンボールの人造人間も、単に「18号」でした。台風はさておき、18 と 28 は人気の番号だと思いますが、いかが。ああ、話がそれる。
また、気象庁が船舶向け予報警報を担当しているアジア太平洋域(赤道~北緯60度、東経100度~180度)の天気図では、西暦の下二桁を使って「STS(i) 2407 AMPIL」(2024年の07号)と表記されます。
(i) アジア太平洋域(西部北太平洋および南シナ海)では、熱帯低気圧を最大風速で次のように分類します:

本日午前3時の天気図では、"MAX WIND 60 KT NEAR CENTER" で「STS 2407 AMPIL」でしたが、午前9時の時点で "MAX WIND 65 KT NEAR CENTER" の「T 2407 AMPIL」に昇格 "UPGRADED FROM STS"。まあ、そういうことです。
一方、アジア名は日本を含む14の国と地域で組織する「台風委員会」で決められたものです。国・地域10コずつ出し合った合計140の名称があらかじめ表として用意されており、最後の140番目まで使ったら最初に戻って再び使う仕組みです。
ちなみに、5号の「マリア MARIA」はアメリカが提案したもの。宗教色を避けるようになっているので、聖母マリアさまの名前ではありません。また、7号の「アンピル AMPIL」はカンボジア提案によるもので、東南アジアでよく見られる植物「タマリンド」の現地名だそうです。
アジア名は2000年から用いられていますが、それ以前は人名を使っておりました。年配の方々には、アメリカの占領下で始まった、女性の名前だけをアルファベット順に用いるやり方が頭にこびりついているかも。確か1979年から男女同権(笑)、男性の名前と女性の名前を交互に並べた表になりました。ロシアの怖い皇帝の名「イワン Ivan」も使われていたことがありますが、猛威をふるう台風だと誰もが「だからイワンこっちゃない」と言い出しそうで、それはそれはしょうもないですね。ついでですが、イ・ワンさんは韓国の俳優。日本語が上手なプロ・ゴルファー、イ・ボミさんのパートナーです・・・またまた話がそれる。何の話をしていたのでしたっけ?
なお、ウィキペディアに今昔の台風の名前が詳細に記された表があります。お暇ならどうぞ。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%B0%E9%A2%A8%E3%81%AE%E5%90%8D%E5%89%8D
台風の始まりと終わり
さて、台風とは、熱帯低気圧で「中心付近の最大風速が 34kt 以上」、海上強風警報 [GW] 以上が必要な風を伴うものをいうのでした。ここで疑問発生、34kt という閾値を超えたかどうか、どうやって分かるのでしょう? 言い換えると、日本の遥か南方海域で起こっている現象なのに、なんで「○日×時に発生」と言えるのでしょう? 熱帯低気圧がある時刻にいきなりデジタル的に台風になるはずはないでしょう。ある程度は連続的な変化を想定するのがふつう。はて・・・
そこで悩むことはない。実際には、熱帯低気圧の中心付近の風を常時観測するわけにはいかないので、最後は担当する人の判断に委ねられることになるからです。さまざまな観測データをもとに、検討を重ねたうえで、風速 34 kt 吹いていそうだね、となれば、晴れて(晴れちゃダメか)台風になる。このように、人間の判断が介在するので、台風の発生時刻は「○日×時」だと決まるのです。
今度は消滅の方を考えましょう。台風とは、熱帯低気圧であって、中心付近の最大風速が 34kt 以上、のものでしたから、台風が消滅する(台風でなくなる)には、二通りのケースがあります:
(1)熱帯低気圧のままだが、最大風速が 34kt 未満になる
どちらにしても発生のときと同じで、人間の判断が介在しますから、こちらも「○日×時」と決まるのです。
つい先日の台風第5号は(1)のケース。台風として東北地方に太平洋側から上陸し、日本海に抜けたあと風が弱まって熱帯低気圧になりました。日本時間14日09時のひまわり「可視画像」です:

ここでは熱帯低気圧としての構造を維持していると判断されましたが、15日午前9時にはまるっと消滅しています。
一方、「もはや熱帯低気圧としての構造を持っていない」と判断されると、「温帯低気圧に変わりました」となります。2-3日のうちにその事例が登場しそうな気がするので詳しい説明は控えますが、「台風は温かくて湿った空気だけでできている」でしたから、「中心の近くに比較的寒冷な空気が入ってきた」ら温帯低気圧だと思うのが自然でしょう(ii)。
(ii) 元・水の分析屋さんの若かりし頃、台風が北上して北緯40度線を超える頃には、たいてい温帯低気圧に変わっていたものです。つまり、北緯40度あたりが「北側にある冷たい空気と南側にある暖気との間」にあたっていたのではないでしょうか。どうしても、そのころと比べると・・・と考えてしまいますね。地球温暖化を否定する学者さん、書店で平積みになった著書があるので、まだ生きておられるようですが、台風が台風のままで北海道に上陸するようになった現実をご承知なのですか? それともボケたのにまだ稼いでいるのですか?
つい先日の2024年5号台風は、北緯42度付近にあっても熱帯低気圧の構造を保っていました。よく考えて下さい。(1)ならば中心付近の最大風速が弱まったことが明らかですが、(2)だと低気圧としてのエネルギー源は変わったことは分かりますが、風速については何も言えないですね。「衰えた」台風は「強力な温帯低気圧」に生まれ変わるかも知れないのですが。
テレビのニュースなどでよく聞く「台風は衰えて温帯低気圧に変わりました」という表現、元・水の分析屋さんは、誤解を助長する大変罪深いものだと思っています。