ノーベル賞のニュースを二つ(NHK NEWS WEB より):
▽ ことしのノーベル物理学賞の受賞者に、現在の AI=人工知能の技術の中核を担う、「機械学習」の基礎となる手法を開発した、アメリカの大学の研究者など2人が選ばれました。 (中略) 2人が開発した手法などは、現在の AI=人工知能の技術の中核を担う「機械学習」の基礎となり、その後「ディープ・ラーニング」など新たなモデルの確立につながりました。 (中略) ノーベル賞は情報分野が無いので、どうなるかなと思っていたが、物理で持ってきたのは意外だった。
▽ ことしのノーベル化学賞に、全く新しいたんぱく質を設計することに成功したアメリカのワシントン大学の研究者と、たんぱく質の立体構造を高精度に予測する AI=人工知能を開発したイギリスの企業の2人の研究者の合わせて3人が選ばれました。 (中略) このうち、ベイカー教授はコンピューターを使ってたんぱく質を構成する20種類のアミノ酸から他のたんぱく質とは異なる全く新たなたんぱく質を設計することに成功しました。
また、ハサビス氏とジャンパー氏は「アルファフォールド」と呼ばれる AI=人工知能モデルを開発しました。たんぱく質は種類の異なる複数のアミノ酸がつながり、さらに複雑に折りたたまれることによって機能しますが、その立体構造の解明は長年にわたり、難問とされてきました。
「アルファフォールド」はすでに形がわかっているたんぱく質のアミノ酸のつながり方をAIに学習させることで、折りたたまれた状態の立体構造を高精度に予測することができ、これまで、多くの研究者が特定した2億個のたんぱく質の構造を予測することに成功しました。
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情報部門の技術・発明と考えるしかなさそうな、AI 技術を支える「機械学習」、「ディープ・ラーニング」などが物理学賞の評価対象になった。そして化学賞でも AI による「分子の設計」や「立体構造解析」が評価された。「へぇ」ボタン押すしかないです。
世はまさに大海賊時代・・・じゃなかった AI の時代。確かに、囲碁・将棋の AI は人間の名人でも負かしてしまいますし、イラストでも文芸でも、プロと見分けがつかないくらいの作品を作り出します。でも、AI は「意味を知っている」のではない・・・こんな本があります。

著者のロジャー・ペンローズは、2020年にノーベル物理学賞を受賞しております。受賞理由は「一般相対性理論の強固な予言としてのブラックホールの生成の発見について」です。一般相対性理論の帰結として、重力崩壊する恒星が「特異点」を実際に生じさせることを数学的に厳密に示した、というのですが、そこまではさすがに分からないですね(笑)。なにはともあれ、ペンローズ先生の才能は、従来の物理や数学の範囲にはとどまらない。その脳みその全体像をちょっとだけ見せてくれたのがこの本です。
「皇帝の新しい心」とは 、AI =人工知能。1017 ビットを超える論理素子をもつウルトラニクス・コンピュータです(i)。どんなことにも対応できる知性をもっているはず。で、起動されてから最初の質問「どんな感じがするか」にどう答えるか。結果は「分からん」「何を聞かれているのかさえ理解できない」でした。
(i) 10京ビット、ということで、現代の日本であれば、スーパーコンピュータ「京」などを思い浮かべればちょうどよいかもしれませんね。
1995年の元・水の分析屋さんの読書感想。「皇帝の新しい心」は自分のことを知らないし、何かを感じて動いているのではないのだな・・・そう思いました。AI がずいぶんと進化した今でも、意味が分かっているのではない、という部分については同じことを思っています。「宿題の読書感想文を書いてほしい」とお願いすることはできますが、結果は「人間が読んで感想文と判断できるもの」が出力される、みたいなこと。「うわぁ、素晴らしいのができたね!」ってほめたところで、AI さんは「は?」ってなるんでしょうから。否、失礼しました。「は?」とさえ思うはずがない。
すでに AI は色々な場面で私たちの生活にも食い込んできています・・・まあ、やっかいな時代になったものです。
「大気の状態が不安定」の意味は?
何だかんだゴタゴタと積乱雲の話をしてきました。積乱雲が発達するには、① 対流が自立的に生じる「自由対流高度」までパーセルが持ち上げられるカラクリがあって、② そこから先は潜熱をもらいながら上昇すると周囲の空気よりも軽くなることとが必要でした。再掲の図でみると、「周囲の大気の気温分布」の線が「乾燥断熱減率」の線と「湿潤断熱減率」の線の間にあればよい、ということになります。

これはまさに「条件付き不安定」ですから、積乱雲ができる程度には「大気の状態が不安定」と理解できそうです。
それはさておき、不安定だと言えるからには、「安定度」のインデックス、指標があるはず。実際、そんなにあるのかと驚くくらいの指標があります。詳しくは気象庁による資料(ii) をご覧下さい。
(ii) 「主な大気パラメータについての解説」
https://www.data.jma.go.jp/obd/stats/data/bosai/tornado/indices.pdf
最近の状況をみると、テレビの気象情報などで「大気の状態が不安定」という解説があるときは「積乱雲が発達しやすくて、雷、雷雨が発生する可能性が大」のようです。そして危険度が高まると、「竜巻、ダウンバーストなどの激しい突風が発生する可能性が大」ということで、必要に応じて「竜巻注意情報」や「竜巻発生確度ナウキャスト」が発表される仕組みのようです(iii) 。
(iii) 「・・・ようです」とは、何とも面妖な言い回しですが・・・なにぶん「竜巻発生確度」の予測的中率と捕捉率は、「発生確度 1」の場合それぞれ 1~7%程度に50~70%程度。「発生確度 2」でも 7~14%程度および 80%程度とされております。この的中率と捕捉率で、情報を利用する価値があるかどうか。元・水の分析屋さんには確定的なことは言えません。利用する側次第なのです。
ここら辺で、まとめにもならないまとめです。
気象庁が天気予報等で用いる用語で「大気の状態が不安定」とは・・・局地的な対流活動が起こりやすいこと。上空に寒気が流れ込んだり(iv)、下層に暖かく湿った空気が入った場合に生じることが多い・・・と書いてあります。
(iv) 国語の時間には、「~たり」は繰り返して使うように習います。よい子の皆さんは「上空に寒気が流れ込んだり、下層に暖かく湿った空気が入ったりした場合に・・・」のように書きましょう。
ってことは、対流が生じにくいような大気の状態は「安定」。そうです。対流性の雲ができにくいなら「大気の状態は安定」のはず。元・水の分析屋さんは、「大気の状態は不安定」ばっかり出てきて「大気の状態は安定」とは言わないのが不満で、何回にもわたって対流性の雲の話を書いてきたのでした。
きっと、「条件付き不安定」が積乱雲が発達しそうなレベルであれば「大気の状態が不安定」だと解説するが、警戒を要するようなシビアな現象が予測されない程度であれば、特段の解説はしない。そんなものなのでしょう。逆に、大気の状態が特に解説を要するくらい「安定」なのは、上空の方が高温になる「逆転層」。放射冷却がよく利いた朝など、煙突から出た煙がある高さ以上に上がらず、水平にたなびく現象が見られます。これなら「大気の状態は極めて安定」。ちょっとくらいは騒いであげてもよいでしょう。
最後にオマケです:

引用元はこちら:
「積乱雲に伴う激しい現象の住民周知に関するガイドライン」
~竜巻、雷、急な大雨から住民を守るために~
(https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/toppuu/cb_guideline.pdf)
なお、竜巻注意情報が発表されたら、すぐに外に出て空の様子を観察しましょう・・・と呼びかけているのではないです。そこんとこ、ヨロシク、です。