alchemist_380 のひとりごと

元・水の分析屋さんがブツブツ言います

大気の状態が不安定・・・積乱雲の話(3)

二週間ほど前の記事ですが、朝日新聞社 によるストーリー (9/10):

 

人による目視、フロッピー使用…「アナログ規制ほぼ撤廃」デジ庁発表

人による目視や、紙による掲示を行政手続きなどで義務づける「アナログ規制」の見直しをめぐり、デジタル庁は10日、法律など約8千の条項のうち96%で規制をなくしたと発表した。今年の通常国会に提出された法案も点検し、27の法案に含まれたアナログ規制を未然に防いだという。

アナログ規制とは、目視による検査・調査 ▽国家資格などの講習の対面実施 ▽証明書の紙発行や紙での掲示フロッピーディスクの使用など。政府の「デジタル臨時行政調査会」が2022年にアナログ規制の総点検に着手。デジ庁が10日に最終報告をまとめた。

法律や政省令、告示・通達で修正が必要な条項は8164にのぼり、うち96%にあたる7835条項のアナログ規制を撤廃した。

 

ネット上で知られる河野大臣のイメージからは、2022年に着任されたとたん、何が何でも急いでやれって怒鳴り散らしたのではないかと想像されます(i)。デジタル化が進んでいなかったペーパーの資料まで引っ張り出して、OCR(Optical Character Recognition: 光学文字認識)ソフトなどで読み取ってから「目視で」点検させたに違いない。残念ながら、OCR のソフトウェアはしばしば「読み間違い」をするもの。ペーパーでしか存在していない文書は、滅多なことでは正しくデジタル化することができないのです。なので、デジタル庁の大仕事はアナログの極みである目視で行われたのであろうと考えるのであります。

たしか平成年間にほとんどの法律が「e-Gov 法令検索」に乗っかっているので、すべての作業がデジタルの世界で実行できるのであれば、そこから先の総点検に 2年もかかるわけがない。担当職員が帰宅する前にサーチするソフトを起動しておけば、翌朝には作業が完了している・・・かもしれないくらいです。どこかでデジタル化も自動化もできないことが発生していたから 2年かかった。違うとおっしゃるなら、どのような方法で点検したのか、公開していただきたいです(もちろん文書で!)。もっとも、こういうことでイチャモンをつけようとするとあっさりブロックする大臣らしいですから、はなから聞く耳はお持ちにならないでしょうけど。

(i) 元・水の分析屋さんの初めての気象庁本庁(東京)勤務は昭和の最後でしたが、動作の遅いコピー機さえも「課」単位で台数が制限されていたのに、「コピー20部、3分以内!」って資料を投げつけるように渡してくる上司がおりました。物理的に不可能だとさえ分からんアホか (A)、とんでもないパワハラ野郎だったか (B)。そういう輩が令和になっても生き残っているのだと思います(どこかの県知事さんもそうなのでしょう)。もちろん、集合を扱う言葉では A and B であったに違いない。

四段、もとい、余談ですが、何かの手続きでマイナンバーカードを提出したら、窓口の職員がおっちゃんの顔を目視してきます。いちいち顔をじっと見られたら不愉快ですけどね。選挙に出ようと思っている人は、いくらでも顔を見て、覚えてもらえればよいのかも知れませんけどね。

 

さて、前回は文字数を気にするあまり、上昇流を作ってもらわなくてもパーセルが浮力を得られ、自力で上昇できるようになる「自由対流高度 Level of  Free Convection: LFC」の説明を半端にすませてしまったので、そのへんから続けます。

 

上昇流と雲の種類

9/6 に「十種雲形」の見分け方フローチャートを紹介しましたが、雲の形は、雲を作る上昇流の状態によって違いがでてきます。前回は、低気圧に吹き込む風で地表付近に収束が生じて上昇流になる図、さらに前線付近で無理やり空気が押し上げられて生じる上昇流の図を示しました。前線付近の上昇流を考えたいので、図を再掲します。

温暖前線寒冷前線で上昇流の強さ(速さ)はずいぶん違う

実は、この図は非常に単純化した表現になっており、鉛直方向の縮尺もエエカゲンなのでして、本当にイメージだけでした。とはいえ、間違いを示しているわけじゃないので、教科書的に OK なレベルのお話はできます。

実際の温暖前線の前線面の勾配は、水平方向に 300m進むと 1m高度が増す程度の、かなり緩やかなものです。仮に、その前線面に沿って風速 10m/s の風が吹いていれば、鉛直方向には30秒で 1m上昇する計算で、約 3cm/s の上昇流になります。こうした温暖前線の前線面のように、かなり広い領域でジワジワと空気が上昇するタイプの現象だと、上昇流の速さは毎秒数cm ~十数cm 程度。作られる雲は鉛直方向にはあまり発達せず、層状に広がることになります(層状雲と総称します)。層状雲がもたらす降水は弱いのがふつうで、同時に広い範囲に降る「しとしと雨」のタイプです。

一方、寒冷前線は寒気が暖気の下に潜り込んで上層へと押し上げる姿になっており、後述の対流と同様の上昇流を作ります。前線面の傾きは温暖前線よりもずっと急です。一般に水平方向に 50~100m進むと 1m高度が増す程度。それでも温暖前線の数倍の勾配ですから、単純に考えても上昇流は強いわけです。

また、太陽光で地表面が暖められ、それによって地表付近の空気が暖められて軽くなって発生する対流でも上昇流ができるのでした。対流の強さは「ピンキリ」ですが、上昇流の速さは毎秒数m ~ 数十m にもなります。層状雲を作る上昇流の速さと比べると、まさに桁違いですね。いずれにせよ、エア・パーセルが次々と上空に運ばれることで作られる雲は対流雲と総称され、鉛直方向にモコモコと発達して雲頂が高くなります。これは、パーセルが自由対流高度以上の高度に到達して、自力で上昇し続けることができるようになったからこその現象です。

自由対流高度が存在しており、そこまでパーセルを持ち上げるカラクリが存在しているかどうか、という状況がさまざまだからこそ、積乱雲をめぐる諸現象を観察する楽しみがあるのではなかろうか・・・このブログのように、雑学的に気象学をおさらいしようとする人にとってはもちろん、未知の物理的過程を探る研究対象とする人にとっても、ネタの宝庫であることに変わりはありません。いや、同列の言葉で語ってしまい、大変失礼しました m(_ _)m。

 

今回は簡単に触れるだけにしますが、対流雲からは、しばしばシャワー性の強い雨が降ってきます。ときには、霰(あられ)がバラバラと降りますし、ゲンコツほどの大きさの雹(ひょう)(ii) が降ることだってあります。

(ii) 霰(あられ)と雹(ひょう)は、どちらも空から(雲から、が適切でしょうか)降ってくる氷の塊です。氷の粒径が 5mm未満だと霰、5mm以上だと雹、ということになっておりますが、どっちともつかない大きさのものが降りますし、両方が混じって降ってくるのも当たり前にあることです。元・水の分析屋さんは、頭に当たったら「痛い」のが霰で、頭に当たったら「ケガをする」のが雹である、と考えています。定義があるとは言っても、そのくらいのものだとご理解下さい。ついでですが、雪は氷の結晶が降ってくるもので、霙(みぞれ)は雨が混じった雪。気象庁的には、霙が降るのも「降雪」の扱いです。でも、霰は雪でも雨でもありません。ややこしや~ややこしや~。

 

そんなこんなで、私たちが空を見上げてみつけることができる雲。こんどはフローチャートではなくて表にまとめてみました。

対流雲の雲底は 数百m あたりにあるので下層雲の扱いです

乱層雲 Ns は「雨雲・雪雲」のことです(ラテン語で 雨雲を意味する Nimbus と 層を意味する Stratus を合体させた名前です)。一応、中層雲として扱うのですが、雲底は下層の数百mにある一方で、雲頂高度はもうすぐ上層雲の範囲になる 5-6千m に達することもあります。

 

次回こそ、いよいよ積乱雲によるシビアな現象について書けるだろうと思っています。