スポーツ新聞にありがちな「造語」の一種か・・・とは思いますが、これは何のつもりでしょうね。記者さん、担当デスク、その他大勢で無教養をさらしているのかな。
照ノ富士が現役引退 年寄「照ノ富士」襲名 日本相撲協会が発表 17日午後に引退会見
(スポーツニッポン新聞社 によるストーリー)
横綱・照ノ富士の現役引退を正式発表 年寄・照ノ富士を襲名…
(報知新聞社 によるストーリー)
「照ノ富士」という年寄名跡はありません。どうすれば「襲名」できるんでしょうか。襲名するには、先代の存在が必須です(歌舞伎や落語の業界で行われていることをご存じないのか)。
とはいえ、スポーツ新聞はこの手のネタには事欠かないのでして。
プロ野球のキャンプのニュース。目の前で厳しいトレーニングに精を出す選手たちに監督が「ゲキを飛ばす」なんて記事をよく目にします。どうやら、目の前にいる選手たちを大声で叱咤激励(i) しただけのことらしい。
(i) 「激励」はその場で伝わるに決まってまして、飛ばすものではありません。「王朝の簒奪者を誅すべし」「いまこそ決起せよ」のような主義主張を、遠く離れた人たちに伝える、そういう書面が「檄文」。これなら(敵地の向こうに届けたいので)飛ばすものだと思いますけど。「ゲキを飛ばす」を使い始めた人は、「檄」という字を知らなかったせいで「激」と間違え、さらにその字さえも書けなくて、カタカナの「ゲキ」を見出しにするという安易な方向に向かったに違いない(大笑)。違うと主張するなら、どうぞどうぞ~。
大型補強と称して強打者ばかり集めて守備力に難のある某球団・・・おっと、特定してはいけません。優秀な外野手なら簡単にランニングキャッチするはずの打球を、ギリギリのスライディングキャッチにしてしまう・・・なんてケースがよくあります。しかぁし、翌日の御用新聞の紙面には「○○魅せる(魅せた)」(ii) という見出しが躍るわけです。でもね、魅力あるプレーで目を引きつけた、ということを書きたいのなら、正しい表現は「魅する」であります。辞書を引けば分かることなのに、残念でした。新聞記者が国語辞典をお持ちでないのですかね。
(ii) 「昔捕ったシノヅカ」とか「キクチが捕れなきゃそれは無理」とか、名手とされる人でさえなかなか・・・のファインプレーなら「魅」がふさわしい。うちの芸達者なワンコが、お手、おかわり、ハイタッチ、もう一つ、ゴロンの連続技とかで「いいところを見せた」レベルのことを「魅」を使って書くから火傷を負うのです。こういうのを「ミスる」と言わずして何としましょうか。「鬼」が入っている字には特別な力があります。お気軽に使うんじゃありません。
ついでで申し訳ないのですが、昨年(2024/11/16)、「綺羅星」にイチャモンをつけたこと、ご記憶でしょうか:
講談社国語辞典(第二版)
《「綺羅、星のごとく・・・」を誤用してできた語》美しく輝く多くの星。
新明解国語辞典(第八版)
〔「綺羅、星のごとく」を誤って続けた語〕美しく輝く星。
・・・と書かれていますが、新聞や放送局が使った言葉は一般に認知されたも同然。元・水の分析屋さん、子供の頃から「発売中」(iii) が何のことか分からなくて困ってましたが、これに違和感をもつ人も、いまでは絶滅危惧種なのかも知れません。
(iii) 「発売」とは「販売を始める」ことですから、そこに動作継続の「中」がくっつくのはヘンなのです。いつまで販売を始め続けているのか、というのが元・水の分析屋さんのもつ違和感の正体です。
以上、私の意見です。
いやー今日はブツブツ言いました・・・いや、言っただけでしたね~。