9/28 中山競馬場 芝1200m のスプリンターズステークス〔G1〕。勝ち馬投票券を購入したわけでもないのですが、感動の場面に出会うことができました。
11番人気のウインカーネリアン(三浦皇成 騎乗)が G1 初制覇。最後の直線で、武豊 騎乗のジューンブレアとの競り合いを制しました。三浦騎手自身も G1通算 127度目の挑戦(!?)で悲願の初勝利。テレビで見ておりましたが、やはりゴール直後に武 騎手から声をかけられていたそうです。「おめでとう、長かったな」と。三浦騎手も「憧れの先輩なので……危なかったですね。ゴールしてすぐ泣きそうになりました」って。ゴールした後の様子、そうじゃないかなぁと見てたもので、やっぱりそうだったのかと知って、こちらが泣けてきました。なんとも素敵ないい話です。
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さて、9/18 の投稿で、「1キログラム当たり8000ベクレル」云々で大騒ぎした記者さんは排除されたのですか? と書きましたが、これだけでは何だかよく分からない・・・と気付きましたので、大々的に補足しておきます。
原子力関連施設から発生する100 Bq/kg 以下の廃棄物は、「低レベル放射性廃棄物」という扱いになります(原子炉等規制法、略称・炉規法による「クリアランス基準」)。基準をクリアした廃棄物であれば、それを再生利用した製品が日常生活を営む場所で使用されても(i) 特段の危険はない、という基準値です。福島第一原発の事故のずっと前から運用されています。
(i) 例えば、廃炉を解体して出たコンクリートを建築資材にするとか、金属を公園のベンチなどに再生利用するとか。ただし、環境省の文書では「特段の危険はない」ではなくて「安全」と言いきっています。
一方、「8000 Bq/kg 以下」は、福島第一原発の事故に伴って環境に放出された放射性セシウム(主に137Cs)で汚染された廃棄物について、一般的な処理方法(分別、焼却、埋立処分等)を想定して(ii) 安全に処理するための基準です(放射性物質汚染対処特措法による「指定基準」)。あくまでも非常時における基準値ということで、クリアランス基準ほど安全側に寄せてはいませんが、何かを誤解している一部の人たちが「通常のゴミと同様に処分するのか」と声をあげていました。
(ii) 焼却施設や埋立処分場では、排ガスおよび排水は適切に処理されますし、埋め立てる際には覆土を施しますから、環境中に有害物質が拡散することはないはずです。つまり、環境中にむき出しで放置できないものを、危険ではない範囲で処理・処分するための基準です。もっとも、環境省の文書では、「周辺住民の方にとって問題なく安全に処理」と言いきっています。
8,000 Bq/kg 以下の汚染土を、遮蔽および飛散・流出の防止を行った上で、全国の公共事業で利用する方針が打ち出されたのは2016年3月とうっすら記憶しています。それを受けのて大騒ぎ、たとえば、認定特定非営利活動法人 FoE Japan の 2016/05/02 の記事(2024/07/17 アップデート)にはこのように書かれています・・・
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今回の「8,000 ベクレル/kg 以下、再利用しちゃえ」基準は、2011年時に、「非常時だから 8,000 Bq/kg を通常のゴミと同様に処分してしまえ」という環境省の方針を、さらに。緩めたものだ。 (※下線は元・水の分析屋さんによる)
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「大騒ぎ」の正体はこんなところです。ですから、怒り心頭に発したせいかとは思いますが、単位の表記がそろってないのと、下線を引いたところの言葉遣いと、句読点の間違いくらいは直した方がいいと考えます(2024年のアップデートで可能だったはずです)。「100 Bq/kg 以下」と「8000 Bq/kg 以下」。80倍もの開きがある「ダブルスタンダード」は納得できないというのでしょうが(実際、私も納得はしていません)、怒り心頭に発するのは、話を最後まで聞いてからでも遅くなかったはずですからね。
福島第一原発の事故で発生した廃棄物。「環境中にむき出しで放置しておけないものなので、危険ではない範囲で処理・処分する必要がある」ことくらいは、まあ、認めていただけるのではないでしょうか(だって、処理・処分はしないという、完全に無責任な選択肢はあり得ないですから)。問題は、誰の責任でどのように実行するのか、ということに絞られております。
責任の所在は簡単です。なぜだか分からないが、東京電力に責任を負わせることはできないので、国の責任でやるしかないのです(理由が分かる方、もしおられたら教えてくださいませ)。困ってしまうのは、 国民(とりわけ周辺住民)に対しては「安全」と主張しなければならない点です。何しろ、炉規法ネタでひねり出した「クリアランス基準」の「100 Bq/kg 以下」でさえ、ゴリ押しで通して不評をかったのです。今度は緊急時の特措法による対応。どう頑張ってもより高い数値を出すしかない・・・(iii)
(iii) 元・水の分析屋さん、公務員やってましたから、イヤな記憶ですがこんな状況も経験済みです。上司が「これは無理方程式だ。どうやって解くか考えろ」って言うのです。無理方程式という呼び名はまったく当てはまりませんが、理系とは思えない思考回路の人でしたので仕方ないです。解きようがないのだから、解けたフリをするだけです。ほかに手はありません。完全なウソを言っているのでなければ・・・それでいいというのです。「解く」んじゃなかったんか~い!
そこで、です。安全性を語るには、人体への影響を評価するシーベルト(Sv/y)で規制するべきなのですが、炉規法ではかねてより「○○ Bq/kg 以下」と、放射能の値で網をかけてあります。これを思い出せば、放射能で「8,000 Bq/kg 以下」のものを処理・処分しても、追加の被ばく量が「1 mSv/yr を超えることはない」なら OK ・・・のようになるわけです。確かに、安全性を考えるうえでは、間違いはないでしょう。正しく運用されるなら、ね。
環境省による平成27年12月の「中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略検討会(第2回)」資料には、こんな再生利用例が掲げられていました:

「その他、再生利用事業者のニーズに応じ検討」という文言が泣かせてくれます。放射性セシウムを含む廃棄物だと知っていながら、敢えてそれを使わせてほしいっていう奇特な業者さまが果たしているのでしょうか。本来の意味での「ニーズ」なんかあるわけがない。公共事業を請け負う業者さんにお願いして、何とかしてもらう向きのはずです。まあ、役人的には、工事の仕様書に書き込んだ時点で、請け負う業者がいることイコール「ニーズ」がある、と勝手に考えるのでしょう。知らんけど。
さて、遮蔽および飛散・流出の防止措置を施したとしても、大地震や土砂災害が発生すればどうなるのか。河川氾濫で堤防が決壊した事例もたくさん知っていますね。また、皆様ご承知のとおり、何もないはずの街中でいきなり道路が陥没する事例もありました。人間の作った構造物など、予期しないところで簡単に崩壊するものと心得るべきでしょう。であれば、廃棄物がむき出しにならないままで、2-3回の半減期(137Cs なら約30年)を繰り返すことを期待するのには、ちょっとムリがあるかも。
そして、これこそが一番の問題だと思っているのは、再生利用の途中経過も完成後の状況も、ほとんど把握されていなかった事例があることです。以下、原子力資料情報室のページからの引用:
(環境省指定廃棄物対策担当参事官室は、2016年に実施された工事に関して)福島県の避難指示区域内で発生した3,000Bq/kg 以下の災害がれき(コンクリートがら)23万トンを避難指示区域の沿岸部で、海岸防災林の盛土材に使用したと回答した。環境省は放射性物質濃度測定を行い、セシウムが 3,000Bq/kg 以下であることを確認した上で業者に引き渡したというが、「業者がどの場所でどのくらいの量を使用したかは業者に任せているためわからない。全量を完全に使い切ったかどうかわからない」と説明。業者に対しては30cm以上の覆土を行うように求めているが、「実際に確認したわけではないため、業者が本当にその施工を守っているかどうかわからない」
決まり事を作ったお役人が、その決まり事をちゃんと守ろうとしていない/守らせようとしていない。(実際、私も納得はしていません)の理由はこれです。大丈夫なはずの決まりが、正しく運用される、と信じ切れないのです。
なお、137Cs 以外の放射性核種は考えなくていいのか、という人もいるでしょうから、こんな資料も用意してみました:

復興庁のページにあったデータです。
貴ガスの 133Xe は気体ですし、短い半減期で β崩壊して、どんどん 133Cs(セシウムの安定同位体)に変わっていきます。131I も短半減期。こちらも β崩壊でどんどん 131Xe(キセノンの安定同位体)に変わっていきます。また、ストロンチウム Sr は Cs のように土壌に捕捉されることはない(流れ去ったかも)。ということで、それなりの量が放出され、まだ環境影響が懸念されるのは 137Cs だけと思っていいのです。
ただし、長寿命のプルトニウム Pr の放出量はごく僅かですが、この表に記載されていない ネプツニウム Np の β崩壊によっても生成します。そこを書かなかったのは、もしかしたらですが、Pr が Np のβ崩壊で生成することを知らない人向けの情報かも・・・少々インチキ臭いかも知れません。そんなことしてたら、バレたときに余計に印象を悪くするのですが。
長くなりました。今日はこのへんで。