9/14 のニュース:
環境省は、除染土を花壇の土として再利用するため、東京・霞が関にある経済産業省などに運び込みました。
経済産業省が入る庁舎では、福島から運ばれてきた除染土を、駐車場前にある花壇に55センチの深さで入れる作業が行われました。その上に飛散防止のため通常の土を20センチかぶせるということです。
環境省の基準では、再生利用する除染土の放射性セシウムの濃度は 1キログラム当たり8000ベクレル以下。今回の土は1キログラム当たりおよそ4000ベクレルとのこと。
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元・水の分析屋さんが気になって仕方がないのは、除染土を展開する作業にあたる皆さんの姿です。

しまった・・・ 7月に総理官邸の庭で除染土の再生利用が始まった際のニュース映像(画像も)、除染土が袋に入った状態の場面と、作業終了後の大臣たちの視察だけしか見てなかった。そんなのよりも、ずっと大事なことがあったのに、うっかりしてました。
でも、今回はバッチリ見てしまいました。作業員の皆さん、防護服はおろか、マスクさえ付けていないのです。総理官邸のときも同じでしたか? 取材に行ってきた記者さんに訊いているんです。「1キログラム当たり8000ベクレル」云々で大騒ぎした記者さんは排除されたのですか? そうでないなら、今度取材に来た人たちは、ここで何の疑問も抱かなかったのですか? 皆さん、マスクも持たずに、すぐそばで作業を見ていたのですか? マスコミもブラック企業なのかな?
もしかしてですけど、今回のこの作業、除染土とはいっても、もう、ふつうの土と同じなので、特に注意することはない、というアピールになっているのでしょうか? それであれば、記事の中で安全性について書くべきではないですか? あっちにもこっちにも義理を立てたのか、何らの主張もない記事になってはいませんかねぇ。
なお、総理官邸の庭に埋め立てられた除染土は 2m3 でしたが、今回は 約45m3。どちらにしても、おおよそ 1400万m3 あるという除染土のほんの一部に過ぎません。ここで一息入れているだけでは、政府の「やってます感」を醸すパフォーマンスに終わってしまいます。東京電力がカバーしている地域の皆さん、福島だけに負担を押しつけてはいけないことは理解できるはずです。それぞれの地域で少しずつ分担できないでしょうか。最低限、「よく分からないけど反対」や「分からないではないけど、わが町はイヤ」(i) はやめていただきたいと思います。負担する気がまったくないのでは、議論にさえならないからです。
(i) NIMBY ニンビー と言われる態度。「(必要性は分かるけど)自分の裏庭(In My Back-Yard)ではやらないで(Not)」⇒ Not In My BackYard という意味です。廃棄物処理施設、火葬場、刑務所、保育園、学校、介護施設・・・ ないと困る、でも、近隣住民には迷惑。自分もお世話になるものが、ちゃんと含まれておりますが。
\(・_\)それは(/_・)/おいといて、今日のクサいものは・・・「う○こ」などのニオイです。
クサいはずの物質もクサく感じなければ OK
消臭芳香剤「消臭力」や防虫剤「ムシューダ」で知られる エステー株式会社(英語ではS.T. CORPORATION)。2023/05/29 のニュースからいきましょう。
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エステー株式会社は、国立大学法人東京農工大学との共同研究で、硫化水素やメチルメルカプタンなどの揮発性硫黄化合物に応答するヒトの嗅覚受容体および、その応答を抑制する香料物質の探索を行いました。さらに、応答抑制香料を用いることによりヒトの嗅覚における揮発性硫黄化合物の感じ方が抑制されることを明らかにしました。
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やはり 'T' は「テー」って読むのね~ 昭和ですね~ リポビタン 'D' は「デー」なのに、オーストラリアの大分水嶺 ’Great Dividing Range’ は「大ジバイジング山脈」ときたもんです。アメリカ東部宇宙ロケットセンター は 'Cape Canaveral'「ケープ・カナベラル」ですが、昭和のころの旧称 'Cape Kennedy' は「ケープ・ケネジー」。ついでですが、審判員 'referee' はもちろん「レフリー」。リングアナウンサーの「レフリー、ミスター・タカハシ~」が懐かしいですねぇ・・・・・・おお、話がそれすぎました。
本題は、ヒトは「嗅覚受容体」をもっていて、「応答抑制香料」の働きによって揮発性硫黄化合物の感じ方が変わる、というところです。揮発性硫黄化合物(Volatile Sulfur Compounds: VSC)は、クサいものシリーズ第6弾で既出。硫化水素、メチルメルカプタン、ジメチルサルファイドなどです。そのクサさが香料で抑制されるというのですから、エステーさん、やりましたね! 実生活における問題を考えると、物質としてクサいものであっても、クサく感じなければ OK なんです。
いくらなんでも、これはクサいでしょう
そこで、今回のクサい物質。インドール Indole と スカトールskatole を紹介しましょう。構造式はこちら。

インドールは、ベンゼン環と窒素 N をもつ五員環が縮合した形。必須アミノ酸の一つ、トリプトファン Tryptophan の側鎖です。つまり、アミノ酸が消化されてできるものですから、う○このニオイの元だというのも納得でしょう。
スカトールは、インドールの図で 3番目の C のところにメチル基がくっついた形です。そこで 3-メチルインドール とも呼ばれます。もちろん、インドール同様、消化にともなってトリプトファンから作られます。スカンクの屁のニオイは、このスカトールのものです。
というわけで、どちらも糞便、屁のニオイのはず。そのクサさを抑制するなんてことはできるんでしょうか。
薄めると違うニオイに
ヒトの味覚には、栄養源になるものや毒性がある物を判別して、適切な食物を選ぶ役割があります。舌にある「味蕾(みらい)」という小さな器官に存在するタンパク質(味覚受容体)が、味をもたらす化学物質を選択的にとらえて、その情報を脳に伝達します。情報が脳に届かないと、味を感じることはないわけです。
基本となる「味」は五種類(甘味・酸味・塩味・苦味・うま味)で、それぞれが独立して感じられているそうです。そこで、味覚をうまいこと混乱させると、思いもよらない味に出会えるらしい。「プリン+しょうゆ → ウニ」「きゅうり+蜂蜜 → メロン」「牛乳+たくあん → コーンポタージュ」「ミカンの薄皮+醤油+ノリ → イクラ」などが知られているようですが、元・水の分析屋さんはホンモノがいいので試したくないです。
さて、ニオイの話にうつりまして。ヒトは、香りを感じさせる物質が結合する嗅覚受容体たんぱく質を396種類もっているそうです。味覚受容体に比べてずいぶん多いですね。味覚と違って、基本となる「香り」が存在せず、数十万種類とも言われる香り物質の組み合わせで様々な香りが作られていることに対応しているかのようです。でも、嗅覚受容体の数が多いせいで、香り物質の濃度が低いと、結合できる嗅覚受容体たんぱく質の数が減ってしまいます。その結果、濃度が高い場合に感じる香りとはまったく異なる質の香りに感じられる、という、直観に反する奇妙な現象が起こるのです。

たとえば、VSC の仲間のジメチルサルファイド DMS は、高濃度であればイヤな「口臭」だったり、「磯の香り」が漂ったりします(悪し様に言うなら、磯クサい、です)。ところが、低濃度だと、ストロベリージャムやコンデンスミルクの香りが感じられます。
ギンナンのところで登場した酪酸も、ワンコたちが好む「クサい靴下のニオイ」をもつ一方、低濃度であれば「ほんのり果実の香り」です。アイスクリームに用いられるバニラは、濃厚になると「古紙みたいなニオイ」になってしまいます。
また、インドールの場合、高濃度なら「う○こクサい」ですが、低濃度になると、驚くなかれ「ジャスミンの香り」や「クチナシの花の香り」に大変身です。天然のジャスミンオイルはとても貴重なものだそうですが、インドールを化学合成すれば一気に低価格になります。スカトールも、やはり、高濃度なら「スカンクの屁」や「糞便の悪臭」ですが、低濃度になると「スミレの花のような清涼感」のある香りになり、ほかの香料成分の香りを深める作用もあるそうです。結果として、インドールもスカトールも「香水」の重要な成分となっています(大笑)。
糞便、屁のニオイは、抑制する必要はありませんでした。薄めるとよい香りですが、濃厚なままだとクサいのでした。必要に応じて「消臭」に頼るしかないようです。
ニオイの上塗りもある
料理では、素材が持つイヤなにおいを消すために、香りの強い香辛料を使用することがあります。香辛料の強い香りをもたらす物質が、多くの嗅覚受容体たんぱく質に結合して、その香りが優勢になり、相対的に弱い香りを消すことができる、という仕組みです。こういうのを「マスキング」といいます。昔ながらのトイレの消臭剤、鼻をつくツンとしたニオイのものがありましたが、あれもマスキングだったのでしょうか。
一方、クサい靴下の「イソ吉草酸」とバニラの香りの「バニリン」のニオイを同時に嗅ぐと、あっと驚くチョコレートの香りになるとか。どちらも強いニオイは勘弁して欲しいのですが、こういう相互作用もあるのですね。
今回はここまで~