靖国神社参拝の話の続き。
参院選で勢力を伸ばした参政党は総勢88人で参拝。東京新聞の記事で初めて知ったのですが、参政党はこれまで、1952年にサンフランシスコ講和条約が発効した 4月28日に参拝してきた。8月15日に参拝したのは「今年は戦後80年の節目。選挙で大きな期待を頂いたので」と神谷氏は言いますが・・・ 講和条約発効と終戦(敗戦/降伏)とは意味合いがかなり異なりますし、降伏文書調印なら 9月2日です。どういう意図をもって4月28日でもなく 9月2日でもない 8月15日を選んで参拝したのか。80年目の節目も選挙結果も、何の理由にもなっておりません。
以下、私の感想です:
ホントは「保守気取りの人がこぞって参拝するから乗っかっただけ」じゃないの? ま、2年かけて練り上げたという憲法草案みたいなのが驚きの低レベルだった実績のある人たちです。参拝日の違いなど考えてはいないと思います。
日本保守党の百田氏は「談話」を発表。X上で「もしよければ、お読みください」ということでしたので、そうでもないのですが、よいことにして読みました。
「談話」の最後の方に、「戦後八十年、戦争の「罪」は償ったと言えるでしょう。少なくとも、今を生きる日本人がその罪を背負う必要はありません」と書かれています。さらに続けて、「歴史となった戦争を振り返るのは、本来歴史家の仕事です。私たちは歴史を政争の具とせず、未来の平和と繁栄をいかに構築するかを考える標としたいと思います」だって・・・ 以下、感想です:
ああ、どこまでも残念な人ですね(彼の見解に賛同する人にも同じことを言いたい)。戦後八十年を振り返って「罪は償ったと言える」とあなたが言うのはおかしい。自分で歴史家に仕事を振ったんでしょ? そして、歴史家でもないのに「日本国紀」という歴史の本を書いたのなら、完全に越権行為ですね。自分の歴史観だけちゃっかりお披露目して稼いでおいて、今度は歴史を政争の具とはしないだなんて、これはとんでもないご都合主義。
そんな人に未来の平和と繁栄を語られても、「戦後80年も経ったんだから、戦争のことは、もう語る必要はないじゃないか」みたいにしか聞こえない。歴史を踏まえない未来像、将来像。そんなものには何のありがたみもない。歴史を背負うつもりはなくても、歴史を語ることはできるし、語らないと評価もできない。だから、罪を背負う必要はないというのと、罪についてはもう語らないというのは、ずいぶん意味が違う。自分の歴史観を大声で主張しておいて、戦争の「罪」についてはもう話さない(話させない)。これが「美しい日本」が好きな人に共通するずるさ/危うさだと感じています。
それにしても、物書きのくせに、党首のくせに、つくづく違いが分からない男ですね(ダバダ~ダバダ~)(i)。
(i) 今年の 2/11 にアップした、対数(函数)の「ありそうな試験問題」を扱った回の注 (i) に「違いが分かる男」たちの系譜を掲載しています。もちろん、神谷氏も百田氏も入っていませんから、安心してご確認ください。
以上、私の感想でした。感想に過ぎないので、もちろん政争の具なんかにはしません。参政党や日本保守党を支持する皆さん、日本人ファーストを旗印にして外国人叩きを楽しんだ皆さん、この先は、政治家、歴史家、その他の方々におまかせしますので、私なんかに絡まないでくださいね。あなた方のやり方をまねてみただけですから。
さて、今日は魚がクサい話です。
魚クサさの原因物質
魚は、基本、臭います。スーパーで切り身を探しにいくと、売り場の近くでは何となく魚の臭い。釣りを趣味にしている方なら、釣り上げたらいきなり魚臭い件についても豊富な経験をお持ちのはずです。有力な原因物質をいくつか紹介しますね。
まずはピペリジン piperidine。シクロヘキサンを構成する炭素 C の一つを窒素 N に置き換えたような形です。

ちょっと品のない話になりますが、ピペリジンは成人男女の股間周辺に生じるニオイがするとされます。魚介類をたくさん触った手を十分に洗わなかったり、実験室などで使用した際に服に付いたりして、それに気付かずに混み合った電車に乗ると、変な目で見られること請け合いです。まあ、その程度にはクサイ。このピペリジンは、海の魚にも川の魚にも共通のニオイ成分です。
また、海の魚と川の魚では、ニオイも何だか違うような気がしますね。まず、川魚のニオイが不快な場合、「泥臭い」とか「かび臭い」とか言われるようです。その原因物質はこちら:

ゲオスミンはズバリ「土の臭い」という意味の名称です(ii)。淡水に暮らす藍藻類や土壌に豊富な放線菌その他の微生物によって作られ、それらが死ぬと放出されます。
(ii) smell の sm に geo が付いている、分かりやすいと思います。また、雨が降った後に土壌から大気中に拡散されて、「雨上がりのニオイ」の元になります。
2-メチルイソボルネオールも藍藻類が作る物質です。毒性はないといいますが、水がかび臭いとされる場合は、この物質が含まれているとみて間違いないでしょう。活性炭によって除去できるので、水道水には入っていません。安心してください。
続いて、海の魚のニオイ。特に、イワシ類、アジ類、サバ類などの「青魚」は生臭い代表格です。原因となっている物質は、アミン類、低級脂肪酸、チオール類などで、それらのニオイが混ざり合ってしまうと・・・それはもう・・・大変なことになります。個別に説明していきましょう。
順序が違うのは許してもらうことにしまして、低級脂肪酸から。「低級」というのは品質 quality が低いのではなく、炭素数がそれほど多くない(10 以下くらい)という意味。「脂肪酸」は「カルボン酸」、カルボキシ基を有する有機酸です。ギンナン臭で登場した酪酸や足がクサい回に出てきたイソ吉草酸なんかも仲間ですから、まあ、一般にクサいとしたものでしょう(直鎖型のカルボン酸はクサい、でした)。
チオール thiol 類とは、イオウ S が水素 H とつながった -SH を末端に持つ有機化合物。メルカプタン mercaptans 類ともいいます。よく燃焼するわけでもないのに、強力なニオイがあるので、都市ガスに混入されて、ガス漏れに気づけるようになっています。クサいことに利用価値がある例ですね。
そしてアミン amine 類。アミンはアンモニア NH3 の水素原子 H を何らかの原子団(○○基)に置換したもの。置換した数が一つなら「第一級」のアミン。二つで「第二級」。もちろん、三つ置換すれば「第三級」です。一・二・三は、価値を連想してもらう並びではないので、そこんとこヨロシクです。

海の魚がクサい原因物質となるアミンは、トリメチルアミン Trimethylamine です(第三級ですね)。この物質は、海洋生物が体内に持っている トリメチルアミン-N-オキシド Trimethylamine-N-oxide(以下、TMAO)の分解で生じます:

塩分 3%くらいの海水の中で暮らすお魚さんたち。この塩分に適応すべく細胞内の浸透圧を調整しなくてはなりません。海水の主要な塩は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム・・・の塩化物。生物の細胞内(魚肉の部分ですね~)に TMAO が存在すれば、主要な塩化物による塩分が 1%ほどで浸透圧を保つことができる。というわけで、魚に限らず、軟体動物や甲殻類も、体内でこの物質を作ります。海水の中で生きていく上では、主要塩類をそのまま利用するよりも効率がよいのですね。
TMAO は生物の代謝生成物です。お亡くなりになって代謝がストップすると、図でうっすら陰をつけた、無理してがんばった結合がちぎれて分解。トリメチルアミンができてしまいます。TMAO には特段のニオイはないのですが、こちらは悪臭防止法で特定悪臭物質とされる物質。なるほど、とんでもなくクサいわけです。
シメ鯖はうまいですよ
トリメチルアミンが生じた魚はクサいだけでは済みません。スーパーで購入できる切り身のパックの場合、トリメチルアミンが増えると、タンパク質の分解による「身くずれ」「ドリップ」「変色」等が起こり、最後には細菌が大増殖して「腐敗」します。もちろん、そうなる前の適切なタイミングで売り場からは排除されますけど。
どうにかしてトリメチルアミンを除去できないか。はい、ここまで物質に着目してきたのですから、やはり化学の出番です。アミンはアンモニアの仲間。アルカリ性ですから、酸で中和してはいかがでしょうか。
たとえば、新鮮なサバは刺身で食するのが最高という方がおいででしょうが、シメ鯖というのもよいと思います(iii)。三枚におろして骨を取り除き、まんべんなく塩をまぶして水分を抜き、酢で締める。トリメチルアミンは中和されて酢酸塩を形成しますから、クサい成分が揮発することはない。サバのおいしさを存分に味わえばいいのです。さらに、日本酒を振りかけた昆布ではさんでおくと・・・昆布風味でもっと素敵な味わいも。
(iii) 刺身でもシメ鯖でも、アニキサスにはご注意。死滅させるには加熱するのが一番ですが、それでは刺身にもシメ鯖にもなりません。「-20℃で48時間」冷凍すれば完璧だそうですが。まあ、気をつけましょう。
いやぁ、こういうところでこそ、違いが分かる男でありたいですね!!! ダバダ~
おいしそうなところで、今日はここまで~