alchemist_380 のひとりごと

元・水の分析屋さんがブツブツ言います

これは地球温暖化じゃあないんですか? (オマケ)

今年もまた、政治家さんたちの「靖国神社参拝」(i) をめぐる話題が出てきましたね。参拝に好意的な人は「国のために戦って命を落とした軍人が祀られているのに、参拝しないのはおかしい」のようにおっしゃる。否定的な人は「A級戦犯まで合祀されている状態で参拝すれば政治問題化する」とか言う(私はこちら)。

(i) 総理大臣が参拝する際に「私的参拝」なのか「公式参拝」なのかが問われたりもしました。記者団に向かって「内閣総理大臣たる中曽根康弘」と答えたのは、傑作中の傑作ではあります。何言ってるのかサッパリ分からない。「私的」だった方も、たいていは公用車で乗り付けて警護も付いてました。すごい公私混同ですね。

 

総理大臣をはじめとする政治家さんたちの参拝については、議論百出しておりますが、昭和の時代に天皇陛下が参拝をおやめになっていることをどう考えるか。あまり踏み込んだことは言いたくないですが、「参拝すれば政治問題化する」であろうことを考慮して、皇室としては参拝しない、という結論になったのではないでしょうか。「A級戦犯」の部分に関しては、諸外国から問題視されて当然でしょうから。

政治家という職業は、理想論ばかり振りかざしていたり、非難されるからと逃げていたりでは務まらないでしょうが、皇室に「汚れ」「穢れ」が及ぶようなことがあってはなりません。天皇は日本という国の象徴です。皇室に汚れが及んだら、国そのものが穢れたことになる。何を汚れと言うかはさておき、それは許されないのです。

とまあ、「参拝しないなんておかしい」「参拝するべきではない」と、外野が騒ぎ立てるのさえ憚られる(実際、SNS上で罵り合いが発生している)。その程度には危ない話題なのです。

\(・_\)それは(/_・)/おいといて、全国戦没者追悼式での天皇陛下のお言葉。結びは「戦後の長きにわたる平和な歳月に思いを致しつつ、過去を顧み、深い反省の上に立って、再び戦争の惨禍が繰り返されぬことを切に願い、戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し、全国民と共に、心から追悼の意を表し、世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります」でした。「反省」が入っていますけど、何かおかしいでしょうか。また、総理大臣の式辞に「反省」が現れたのは2012年以来だとのことで、それなりの騒ぎになっていますが、反省して何かいけないのでしょうか。

天皇陛下のお言葉と、総理大臣がさんざん苦心したであろう式辞。受けとめられ方はさまざまなようですが、皆さんはどのように考えますか?

 

熱は温度が高いところから低いところへと流れる ―― 大気の話

これは「熱力学の第2法則」の一側面ですね。一般に、二つの系の間に物理量の差があると、その差を小さくする(解消する)作用がはたらきます(i)

(i) 水も高いところから低いところへ流れる。高塩分水と低塩分水が接すると混じり合って、両者の間の塩分になる。ところが、人間社会には例外が多い。たとえば、金は、あまり持ってない人からたくさん持っている人に移動する傾向があります。もちろん、物理ではない何らかの原因はあるんですけどね。

地球は太陽光で温められていますが、単位面積あたりで受け取る太陽放射のエネルギーは、太陽の南中高度が高いほど大きい。したがって、赤道付近がしっかり温められ、極域はあまり温められないのです。赤道域が高温で南極・北極に向かうほど低温なのは、そもそもこういう温められ方になっているからです。

私たちが暮らしている北半球の「中緯度域」(ii) は、熱帯域と北極圏との間にあって、貿易風帯よりも北で偏西風の影響を強く受ける領域です。大気の循環の様子をおおまかに見ておきたいので、ここで気象学・気候学の教科書に出ているような図をどうぞ。

(ii) 「低緯度」「中緯度」「高緯度」という呼び方は、厳密に定義されているわけではありません。うるさい人は、赤道をはさんで回帰線までが「低緯度」、「極圏」から極までが「高緯度」、その間が「中緯度」だとするようですが、そこまでがんばらなくていいです。回帰線をまたいで立って、「右足は低緯度で左足が中緯度」。これじゃあつまらない。赤道をまたいで「南北両半球に立ってます」のような洒落っ気も何もありゃしない。

 

横文字で「貿易風」を説明しようとした図ですが、まあ、いいじゃないですか

図の右側をみると、30°N のところに  Subtropical high-pressure belt :亜熱帯高圧帯、60°N のところに Jet stream, flows west to east :西から東に向かうジェット気流 と書き込まれており、その間の鉛直循環は Mid-latitude cell (Ferrel cell):中緯度循環(フェレル循環)となっています。

そして、図の左側ですが、30°N~60°N のところに Westerlies と書いてある。これが 偏西風 です。鉛直方向にうねる暖色と寒色のつながった矢印は、偏西風波動に対応する温帯低気圧がもたらす暖気と寒気のオーバーターンを示そうとしているんだと思います。下のようなことです:

だいぶ前に使った図を改変しました

地上天気図に登場する温帯低気圧すべてが前線を伴っているわけではないのですが、分かりやすくするには、教科書に載るような典型例が必要です。悪しからず。

さて、地上天気図の低気圧前面にある温暖前線のところでは、暖気がゆっくりと北上、寒気の上に乗り上げるように上昇します。一方、低気圧の背後にある寒冷前線に向かっては、寒気が下降しながら南下します。暖気が北上して、寒気が南下する。日本列島付近では、温帯低気圧が発生し、発達して、やがて消滅してゆきますが、この過程で南北の空気が入れ替わり、低緯度から高緯度へと熱が運ばれることになります。

で、横文字の入った図の右側にあった「フェレル循環」は、上で述べた温帯低気圧による暖気と寒気の入れ替わりを、「すべての子午線を横切る東西方向の平均(iii) として表現するものだと考えてよいと思います。言い換えると、フェレル循環のような矢印がどこかの子午面で描けるわけではない、ということです。

(iii) 大気中の二酸化炭素濃度は、顕著な発生源の近くは別として、南北方向で差が見られ、東西方向にはほぼ一様です(言い換えると、東西方向に平均化されています)。二酸化炭素濃度が東西方向に一様だということは、混合が十分に速いことを示唆しています。熱の輸送も十分に速いと考えられるなら、理屈が整合します。

 

熱は温度が高いところから低いところへと流れる ―― 海洋の話

ここまでは大気に注目して、偏西風波動=温帯低気圧が熱の南北方向の輸送を担っている、ということを述べました。海洋の循環だって熱輸送くらいしているはずですね。北太平洋の表層循環を例にして話を進めましょう。

北太平洋の表層循環(2023/11/17 の図を再掲)

時計回りの赤い楕円が 北太平洋亜熱帯循環 North-Pacific Subtropical Gyre です。この亜熱帯循環の南側は、15°N 付近をずっと西流している 北赤道海流 North Equatorial Current です。それが陸地にぶつかった西側の端から北上して、南西諸島周辺~本州南岸を通る強い流れが 黒潮 Kuroshio です。黒潮の続きで房総半島からさらに東に向かう部分は 黒潮続流 Kuroshio Extension といいます。この名称は、場所がせまいせいか書き込まれていませんが、45°N あたりを東にずっと先まで流れる 北太平洋海流 North Pacific Current (or Drift)  に連なっています。日本列島の南側を東流している部分が「黒潮」。線が混み合って描かれているのは、強い流れであることを示しています。

そして、図で暖色の線は「暖流」、寒色の線は「寒流」。個人的には、こんな分類には賛成できないのですが(2023/11/15 の記事をご覧ください)、高温の水が低緯度域から高緯度域に輸送され、高緯度域から低緯度域に戻ってくる水は相対的に低温であることは確からしい。ということで、海洋表層の大規模な循環も熱輸送に寄与していることは間違いないでしょう。

黒潮続流の北上は北海道の気象に極端現象をもたらしたか

本日(8月19日)の北海道新聞 1面に「黒潮大蛇行 ようやく終息? ―― 道内の猛暑・不漁に影響」という見出しがおどっておりました。あちゃー、先を越されたか~

こんな図作って構えてたのですが・・・

上段:100m深水温図 下段:50m深海流図 (2022-24年 8月中旬の図)

気象庁の解析による100m深水温と50m深海流の図です。2022-24年の 8月中旬のものを並べてみました。この図を 22日に公表されるはずの 2025年8月中旬の図と比較すれば、北海道南方から本州東方の海域では、まだ暖水の渦はあるものの、黒潮続流の北上は 37.5°N 付近までにとどまっている・・・とか書くつもりでしたが。

まあ、\(・_\)それは(/_・)/おいといて、2022年からほぼずーっと、黒潮続流の北上傾向が続いていて、それが道内の猛暑・不漁に影響した、というのが記事の主旨。

元・水の分析屋さんは、さらに続けて主張したい:

黒潮大蛇行も、黒潮続流の異常な北上傾向も、海洋による南北方向の熱輸送が強化されたことを意味しているはずです。地球温暖化により、海水温は明らかに上昇傾向。亜熱帯循環としては、少しでも亜寒帯海域の水と接触して、水温上昇を緩和したい・・・と思っているわけはないですが、自然の仕組みでそうなった。ということは、黒潮大蛇行に対しても、黒潮続流の北上に対しても、「これは地球温暖化じゃあないんですか?」と問いかけてよかったのではないでしょうか。あの日の記者さん、冷たくしてゴメンナサイ。

 

4000文字超えちゃいましたので、今日はここまで~