6日に広島で行われた平和記念式典、日本保守党代表の百田尚樹氏も参加したようですが、「気になったのは、挨拶を述べた何人かが『過ちを繰り返しません』という言葉を発したこと。広島市民も日本国民も原爆に関して何も過ちを犯していないし、その責任もない。過ちは米国が犯したものである」と X(旧ツイッター)に投稿したそうです。さすが、日本は大東亜戦争でアジアを開放したのだとか、訳の分からない歴史観を持っている人ですね・・・
「保守」を標榜する割りには、守りたいはずの過去の経緯などまったくご存じないようで。ちょっとだけ詳しく学習した広島県出身者としては、しょうもないナショナリズムを感じさせ、怒りをもよおす発言だと言わざるを得ない。
「過ちを繰り返しません」は、平和記念公園にある原爆死没者慰霊碑の碑文「安らかに眠って下さい 過ちは繰り返しませぬから」のことでしょう。この碑文には主語が書かれていませんが、戦争を始めた日本にも過ちがあり、原爆を投下したアメリカにも過ちがある。だから、全人類が「過ちを繰り返さない」ように祈るのでなければ、意味がない。「広島市民も日本国民も何も過ちを犯していない」などという、狭量な考え方ではいけません。一応作家なんでしょ? 物書きがこれを読み取れないとは、情けない限りですね。
慰霊碑に揮毫されたのは広島大学の雑賀忠義教授。「広島市民であると共に世界市民であるわれわれが、過ちを繰返さないと誓う。これは全人類の過去、現在、未来に通ずる広島市民の感情であり良心の叫びである」と語っておられたとか。
百田氏に言いたい。分からないことがあったら、勝手に解釈するんではなくて、事実関係をよく理解している人にちゃんとお訊きなさい。特に、あなたは、政治家にまでなったんだから。出席した式典の意味を考える時間がないなんて、言えない立場だからね。
「偏差図」を観察していても分からないこと
さて、今回のタイトルは、まだ現役バリバリだったころの元・水の分析屋さんが、ある新聞記者さんから投げかけられた言葉です。2010年の夏も、最高気温が30℃を超える日が多く、今年ほどではないものの、かなりの高温でした。同時に、北海道周辺の海面水温が平年よりもかなり高い状態が続いていたので、函館海洋気象台の海洋課に取材にやってきたのです。
北海道周辺から三陸沖にかけて、広い範囲で海面水温が高い状態が続いています、とか説明した私に向かって放たれた言葉が「これは地球温暖化じゃあないんですか?」でした。
そうか、そうきましたか。 実に困りましたね~ どうにも言い切れませんからね~
今年(2025年)と 2010年の「親潮域」(i) の海面水温平年偏差図を示します。左の2010年は8月下旬ですが、右側の今年のは今のところ最新、7月下旬の図です。

この 7月下旬は「平年よりも4℃以上高い」海域ばっかりじゃないか。それに引き替え、2010年の 8月下旬は「平年よりも3℃以上高い」海域が広がっていた。それで騒いでいたのか。へぇ~
実は、それはかなりの誤解を含んだ印象。まずは、「ここから何度違うか」という「偏差」の基準になる「平年」(1991~2020年の30年平均です)の海面水温図をご覧ください。7月下旬と 8月下旬の比較ですよ。

7月下旬に比べると、ほぼ全部の海域で 8月下旬の方が 2-3℃高いことが分かります。大切なことなのでもう一度:海面水温は、7月下旬よりも 8月下旬の方が 2-3℃高い。
ということは・・・ 7月下旬の水温と 8月下旬の水温を「平年からの偏差」で比べるのはマズいですよね。すみませんね、最初の図は引っかけ問題みたいでした。
では、今年(2025年)と 2010年の海面水温の分布図を観察しましょう。偏差じゃないですよ~

おお~、聞いて驚くな、ちゃんと見てから驚け! 27℃と24℃ の等温線は、若干ですが、2010年の図の方が北にあります。21℃の等温線は、どちらも襟裳岬あたりからほぼ東に延びています。図に描かれた領域を考えると、騒ぐほどの違いではありません。多少気になるのは、2010年の方が 18℃以下の領域が狭いことくらいです。おおざっぱで申し訳ないですが、三陸沖~本州東方に関しては、2010年の方が親潮水の広がりが小さいのかも、程度の差でしかない。
つまり、今年の 7月下旬の海面水温は、15年前の 8月下旬とほぼ同じ、というわけです。こりゃぁおおごとじゃ、おおごとじゃ。
2010年 8月の状況は、2025年 7月と同じくらい、あるいはもっと大きな驚きをもって、とりあげられてよかったのかも。それなのに、取材に行った先の担当者(すみません、元・水の分析屋さんのことです)は「これが地球温暖化だとは言いきれない」という説明を繰り返す。あの記者さんの頭の中には「!」と「?」が渦巻いていたのでしょう。もちろん、そこを責める気は全くありませんでしたし、今にしてみても「そりゃそうなるわ~」って思います。
・・・というところで、今回はここまで。冒頭の 6日の話題は、きっと 9日にも連動すると思うので、話の区切りとしては不適切かも知れませんが、お許しを。
次回は「元・水の分析屋さん、最大限寄り添ってみた」などというところからスタートです。