alchemist_380 のひとりごと

元・水の分析屋さんがブツブツ言います

クサいモノの話をしましょう (4)

これはひどい・・・

 

埼玉県行田市で2日、下水道管の点検作業中の4人がマンホールに転落して亡くなった事故のニュース。

4人は転落防止のための安全器具をつけていなかった。酸素マスクも用意されていなかった。4人のうち2人は硫化水素中毒により死亡、残りの2人は硫化水素中毒が原因の窒息死とみられる。

 

下水道管のマンホールの点検を請け負う業者が、適切な転落防止策もとらず、酸素マスクなどの用意もないまま、作業させたというのが信じがたいとしか言えません。作業開始時点の硫化水素濃度は 10ppm 以下(i) だったといいますが、酸素マスク等の用意もない現場で、どのような測定が行われたのか。そこからして疑問です。消防による事故直後の測定値は 80ppm 以上だそう。

(i) 酸素欠乏症等防止規則が適用されるケースだと、酸素濃度 18%以下及び硫化水素濃度が 10ppm以上の場所に防護具をつけない作業員を入れてはならない、だったはず。酸素欠乏症といっしょに硫化水素中毒になってしまいます。一方、労働安全衛生法における作業環境管理濃度は 1ppm。こちらは「作業環境」だから、通常の空気の酸素濃度(約21%)での管理基準。これでも若干クサいでしょう。下水道管のマンホールともなれば、悪臭もある酸欠職場だと考えておかないと。

 

ともあれ、硫化水素はニオイが相当きついので、それだと認識はできたはずなのに、なぜ4人もの犠牲を生んでしまったのか。そこは今後の調べを待つしかありません。

 

で、今回のクサいモノは、硫化水素

 

硫化水素 H2S とは

分子式は水 H2O と同じ姿。それもそのはず、水素 H がくっついているのはどちらも16族の元素で、第二周期の酸素 O と第三周期のイオウ S なので。

2個の水素原子と 1個の イオウ原子 または 酸素原子 で構成される分子

無論、原子番号 16 のイオウの方が原子番号 8 の酸素よりも大きい。分子模型の姿がズングリムックリなのは仕方ないですが、酸素原子が赤かったりイオウ原子が黄色かったりするわけではないですので、そこはご注意。

一酸化二水素(ii)、もとい、「水 H2O」は常温で液体ですが、「硫化水素 H2S」は常温で気体。無色で、水によく溶け、弱い酸性となります。そして、空気より重い(比重1.1905)ので低いところに溜まりやすい。つまり、マンホールの中なら底に溜まっているでしょうし、火山性ガスが発生するような場所であれば窪地に溜まりやすいはずです。こういうのは、まったくの素人でなければ、マニュアルに記載するまでもない「基礎知識」じゃないのだろうか、って私は思ってますが、それでは厳しすぎますかね・・・

(ii) ジハイドロジェンモノオキシド dihydrogen monoxide; DHMO としてよく知られている、極めて有害な物質です。酸性雨の主成分であるばかりか、強い温室効果をもっています。液体の DHMO がしばしば重篤な火傷の原因となる一方で、固体の DHMO を大量に摂取すると死に至ることもあります。自動車のブレーキの効果を低下させ、金属類の腐食を進行させます。農薬の散布にも用いられ、洗浄しても完全に除去することはできません。病死したとされる人の95%以上は、死亡する24時間以内に DHMO を摂取しています・・・・・・ なるほどね、そうきましたか。

 

生卵でいつまで食べられる?

卵が腐ったときには H2S が発生します。卵に含まれるタンパク質中のシステインシスチンというアミノ酸の分解により生成するのです。シスチンは、システインの -HS の端っこが開いたものが二つ繋がった姿をしていますね。

影をつけたところに イオウ S があります

念のためですが、システインやシスチンがクサイのではありません。クサイのは、腐敗によって心ならずも発生した H2S です。

ヒトはなぜか H2S のニオイに敏感なので、これが悪臭の原因物質だとよく知られるようになりました。きっと、狩猟・採集で食糧を得ていた頃から、腐った卵などクサくて食べられたものではない(腐卵臭という呼び名が与えられています)、という経験を積んだせいだろうと勝手に想像します。それに、火山性ガスにも含まれているので、いわゆる「イオウ臭」(iii) がする場所で命を失った事例も知られていたのでしょう。火山まわりのニオイがキツいところには気をつけろ・・・でも、温泉はいいぞ・・・といった言い伝えなどあったかも。

(iii) むろん、単体のイオウにニオイはありません。温泉地などで話題になるイオウ臭こそ、低濃度の H2S のニオイであります。

さて、H2S には刺激的なニオイがある一方で、嗅覚を麻痺させる作用もあります。俗に「鼻がバカになる」と言われるやつです。すると、高濃度でもニオイを感じなくなってしまい、頭までバカになったわけではないのに判断を誤って、高濃度の H2S がある場所に近づいてしまうことがあります・・・ 先代の林家三平さんなら、「奥さん、もう、大変なんですから」って言ったことでしょう。

\(・_\)それは(/_・)/おいといて、スーパーで(地域差もおいといて)10個 300円弱(iv) で購入できるニワトリの卵。賞味期限や消費期限はどのように決められているのでしょう。単身者・独身者向けであろう6個入りのパックもありますが、まあ、割高です。それでも独り者が 6個入りを買いたくなるのはなぜでしょうか。

(iv) 300円弱とは、288円とか298円とか、300円よりもちょっと少ない金額のことです。300円よりもちょっと多い金額、たとえば、308円なら 300円強という表現になります。特に若い世代の方に間違いが多いと聞いています。ご注意ください。

おそらく、誰もが新鮮な卵を欲しているからであろうと思います。卵以外の食品でも、賞味期限か消費期限が表示されているので、商品を手に取りつつ確かめているはず。そこで、です。卵に設定されているのは「賞味期限」であって、「消費期限」ではないのですが、これ、ご存知でしたか? あるいは、賞味期限と消費期限の違いもあやふやなのではないですか。

賞味期限とは、袋や容器を開けないまま、正しい保存方法・場所で保存していた場合に、この「年月日」まで「品質が変わらずにおいしく食べられる期限」です。品質が変わらずに保たれているので、本来の味は損なわれていないのです。

そして、消費期限とは、袋や容器を開けないまま、正しい保存方法・場所で保存していた場合に、この「年月日」まで「安全に食べられる期限」です。食べて健康を損ねることはないけれど、本来の味とは違っているかもよ、ってことになります。

卵に設定された賞味期限は、生で食べられる品質が保たれる期間です。日本のガイドラインでは、一般的に採卵日から14日~28日の範囲になっているそうです。えっ? と思うくらい先が長いですね。これなら、心配なく 10個入りを買えそうです。スーパーで購入してから二週間くらいなら、TKG(v) にしてもよいようですから。

(v) もちろん、Tamago-Kake-Gohan で TKG。「たまごかけごはん研究所」による独自の定義は「白米と生の鶏卵を使用した日本を代表する卵料理の一つ」です。(https://www.japan-tkg.jp/what/ を参照)

 

今日はここまで~