「news every.」(日本テレビ系列)で行われた与野党8党の党首による討論会。石破総理が「あんまり舐めない方がいいですよ。今50代の人たちね」と発言して、アナウンサーを恫喝したとする X投稿が拡散されたそうで。やれやれ・・・
その後の「ファクトチェック」によると、この発言が切り取られた前後の状況から、石破氏は「人口の多い団塊ジュニア(1971~1974年頃の第2次ベビーブームの時に生まれた人々)が高齢化して社会保障費が急増するであろうことを軽視すべきではない」という意味で発言したものとされています。
まず、悪意を持って変な切り取り方をした動画を流したり、それを面白がって拡散したりする人間には、どこかでしっかりと罰が当たってほしいと思います(まさかリンチを正当化するわけにはいかないので、心ならずも神頼みします)。「フェイク」情報が増えれば増えるほど、ホントはどうだったのかが分かりづらくなる。フェイクの拡散を面白がっているような輩は、本来関係がないはずの一般大衆にとっても甚だ迷惑なのです。
また、失礼を承知で書きますが、石破氏は、テレビに出演されたときでも、選挙用のポスターでも、およそ柔和な顔つきとは言いがたいです(i)。その顔で「舐めない方がいいですよ」と話したものだから、格好の「切り取り」ネタにされてしまいました。
(i) エイブラハム・リンカーン曰く、40歳になったら、人は自分の顔に責任を持たねばならない・・・ある程度の年齢になれば、その人の顔に、生き方、人生への姿勢みたいなものが現れてしまうということです。強面とか悪人がほぼ専門の役者さんはいますが、政治家さんが怖い顔である必要はないですから。内面からにじみ出ているのではないか、と見られても文句は言えないでしょう。選挙戦の最中ですが、ポスターでも目が笑ってないとか、怖い顔の方が多いですね・・・あ、これ以上は言いません。
人を「舐めている」とか「舐められている」という言葉は、誰かを敵対視していなければ発せられないはずです。こういう「ケンカ腰」に聞こえるような言葉遣いが、切り取って楽しみたい連中にとっては「おあつらえ向き」になってしまったのでしょう。
\(・_\)それは(/_・)/おいといて、コンプライアンス委員会の結論です:実際には恫喝する意図はまったくなかったようですが、「あんまり舐めない方がいいですよ」→「これは軽視するわけにはいかないのですよ」のように言い換えるべきでした。
では、先週最後に書いた「解析の実践例」と参りましょう。
三陸沖の海面水温、塩分、密度のフラクタル次元
過去に登場させた高風丸2005年春季観測の釧路南東線のデータを解析します。高水温・高塩分の黒潮域から、低水温・低塩分の親潮域、釧路・根室沖までつながった観測データです。
観測船の船底からポンプで導入した海水(ii) の水温・塩分が、連続的に測定されているので、船位のデータを用いて緯度 0.025º (1.5’) ごとの空間列として抽出しました。つまり、緯度1.5’ が 1ステップ(距離にすると約3km)になっています。
(ii) 深さ3-4mの海水ですが、業界のお約束で、これを「インテイク法 intake method」による海面の水として扱います。
下に示す海域を赤い線に沿って観測しております:

右半分の3つのグラフは、上から水温、塩分および密度(σt)の緯度に対するプロットです(北が右になっている)。水温、塩分はセンサによる測定値、密度は水温・塩分から計算された値。
39°20'N 付近で水温、塩分が急変しているところが「親潮前線」ですが、密度は連続的に変化しています。親潮前線は密度の前線になっていないのでしたね。一方、37°N から37°40’N あたりまで水温が北に向かって低下、塩分も少し低下しています。こちらは「黒潮続流」にあたるところで、密度が大きく変化しています。大雑把な言い方ですが、黒潮は密度前線に沿った流れなのです。
さて、上に示した水温、塩分、密度それぞれのグラフについて、緯度1.5’ を 1ステップとしてグラフの「長さ」を測定しました。ステップ数 k と対応する長さ <L(k)> の両対数グラフを作れば、その傾きの絶対値がフラクタル次元になります。
結果はこの通り:

水温のグラフはおよそ 1.24 次元で、コッホ曲線(~1.26次元)くらいの複雑さ。密度のグラフはほぼ 1.5 次元。シェルピンスキー・ガスケットの 1.58 次元に近い複雑さと解釈できます。
面白いのは塩分のグラフで、ステップ数 10、空間スケール 30kmくらいまではだいたい 1.55 次元ですが、そこから先、グラフは上向きに折れ曲がって、1.27 次元程度の傾きになっています。あ~ら不思議、あら不思議。こういうのを「マルチ・フラクタル」といいます。あとでもう少しだけ説明しますね。
水温と塩分の振る舞いが違うのはなぜ?
同じ海面の水を見ているのに、水温と塩分でグラフの挙動が違うのはなぜでしょうか。元・水の分析屋さんの解釈を書いておきます。
海面水温は、海水の移動を考えなければ、海面に届く日射と大気との相互作用に影響されます。暖気で暖められたり、蒸発熱を奪われたり、時に降水を伴うような気象擾乱で下層にある相対的に低温の水とかき混ぜられたり。水温の変化は、原因となる気象現象の空間的な広がりに対応しているのではないか。
塩分は、海水に溶けている物質の量です(海水 1kg の中に 35g の物質が溶けていれば塩分 35 です)。物質は基本的に増減しないので、水が蒸発すれば濃縮されて塩分は上昇し、降水があれば希釈されて塩分は低下します。また、気象擾乱で下層にある水とかき混ぜられると、海面にあった水との間の値になります。こんなのに比べると、水温変化による熱膨張などは全面的に無視していい。
さて、以前どこかに書いたような書かなかったような・・・で、記憶が定かではないのですが、釧路南東線が設定されている三陸沖(本州東方)には、南側の黒潮続流と北側の親潮前線の間に「混合域」とよばれる領域が広がっています。そこでは、黒潮起源の高温・高塩分水と親潮域起源の低温・低塩分水とが、あるときは混じって、またあるときは混じらずにパッチ状に分布します。海面水温の方は、気象現象の空間的な広がりに対応して変化しますが、塩分は出身地(南か北か)による元々持っていた値を保存しやすいのではないか。つまり、塩分のグラフが空間スケール 30kmくらいを境にして異なるフラクタル次元を持つのは、パッチ状に分布する水の広がりが 30km 程度であることを意味していないだろうか。密度は水温と塩分から計算されるので、個別には考えません。
なお、これは論文にはなっていません。ネタにできそうだとお考えの方がおられましたら、何らかの権利を主張する気はないので、ご自由にお使いください。でも、よろしければ、本ブログにインスパイアされた、とか、レスペクトしています、とか、お書きいただければうれしくて仕方ないはずです(笑)。
最後に「マルチ・フラクタル」の説明
たとえば、遠くの山並みの写真を見ると、少し拡大してもほとんど相似な姿に見えます。つまり、自己相似(iii) ≒ フラクタル的だといえます。山並みに双眼鏡を向けて観察すると、こんもりと繁った木々の盛り上がりが、これまたフラクタル的です。拡大率によって、複雑さが違う木々の姿が見えてきます。森に出かけてそうした木々の間にシダを見つけると・・・これまた違ったフラクタル構造があります。
このような、拡大・縮小のレベルによってフラクタル的な複雑さが異なる例は、自然界によく見られるようです。目に心地よいマルチ・フラクタル。
(iii) 実は、縦方向と横方向の倍率を同じにしてしまうと(等方的スケール変換)、とても相似とは言えない姿になることが多いです。それでも、縦・横の倍率を別々に定めれば(アフィン変換)、何とかなります。というわけで、コンプライアンス的に大きな問題ではないはずですが、より正確には「自己相似」ではなくて「自己アフィン」あるいは「セルフ・アフィン self affine」と書くべきでしょう。
今回はここまで、と書きたかったのですが、世間では自民党参院議員の鶴保庸介・参院予算委員長の能登半島地震をめぐる失言の話題で持ちきり。元・水の分析屋さんもちょっとだけ参加します。
被災者への配慮が足りなかった、言葉足らずだった、として「深く反省し、陳謝の上、撤回する」のだそうですが、これだけ拡散された話題なのに、談話とか何とかで「撤回」できるとお思いなのでしょうか。被災地に出向いて、本来意図していたこととやらを語ってみせてください。
・・・あなたの心の中にあった言葉がそのまま出てきただけなのに違いない。選挙区の皆さん、こんな人を国政の場に送り込まないでくださいね。
今度こそ、ここまで~