alchemist_380 のひとりごと

元・水の分析屋さんがブツブツ言います

【数学】なんと素敵なフラクタル (2)

マクラにするには重い話ですみませんが。

 

アフリカの小国ルワンダは、100日で80万人が殺されたジェノサイドによって、日本でも知られるようになりました。フリー・ジャーナリストの稲垣えみ子さんも、そのイメージしかなかったので、現地へ行くとその平和な穏やかさに驚いたそうです。首都キガリはビルと緑が調和した美しい大都会。人々は皆優しく、わずか30年前にナタで殺された死体があちこちに放置されていたとは想像もつかない。実際、ルワンダは、今やアフリカで最も安全な旅行先として人気なのだとか。

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ここからは稲垣さんの文章:

ルワンダの悲劇が歴史的に特異なのは、そのスピードである。これほど短期間に膨大な人が殺されることになったのは、殺害を実行したのが「普通の人」だったからだ。全国の町や村で一斉に、昨日までの隣人が隣人を殺しに行った。なぜそんなことになったのかといえば、その大きなエンジンはラジオだった。
ちょっと過激な庶民のホンネを流して人気を集めたラジオ局があった。誰かがある民族を「ゴキブリ」と呼んだのも、最初は軽いノリに聞こえた。でも差別的な言葉がラジオで流れるのが当たり前になると、事態は次第にエスカレート。その民族の殺戮を呼びかける政治家のスピーチが流れても、その異常さに気づかなくなる。そして大統領暗殺をきっかけに、堰を切ったように暴力が爆発。逃げてきた1200人を匿った実話が映画にもなったホテル支配人はその著書で「人間の兵器庫の中で、言葉は命を奪うのに最も効果的な武器」と書いている。

私は震撼した。このラジオをSNSに置き換えれば既に身近にある光景ではないか。

※「ジェノサイドは他人事じゃない 殺害を実行したのは“普通の人”」(AERA 2025年5月26日号)

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ACジャパン提供(?) 嶋田久作さん演じる見るからに怪しい刑事。「お前がやったんだろう」と威圧的に容疑者に迫るのですが、その根拠は知らない人の SNS上の投稿ひとつでした・・・ 誰のどんな投稿でも、すべて鵜呑みにして追い込んでいく。その名も「決めつけ刑事」。

裏付けのない話を無批判に拡散してはいけません。「できるだけ早く、多くの人に知らせたい」といった善意(?)のつもりでも、「面白がって」あるいは「悪意を持って」拡散したのと同じ結果にしかなりませんから。部外者だから自分は安全と思っているのでしょうが、巻き添えになった人には多大な損害を与えてしまいます。実際、根も葉もない噂話のせいでテレビ出演できなくなるとか、SNS 上のウソ情報から始まった騒動で犯罪者扱いされるようになった人さえいます。当然ですが、拡散に加担した人が特定されたら・・・程度のことは考えておかないと。

確かに、「既に身近にある光景」。人命が失われるようなことが起こらぬよう、祈るばかりです。

 

宿題の答です

計算自体はそれほどムツカシクないと思います。考え方をたどってください。

コッホ雪片に向かう図形に番号を付けておきましょう

変形の操作をひとつ進めるたびに、前の図形の外側に正三角形が「生えてくる」と考えるのがよさそう。1回の操作で増える正三角形の一辺の長さとその総数が分かると好都合なので、先に n の式で表しておきます。

無限級数も登場して・・・極限値がみつかりました

以上、コッホ雪片に囲まれた図形の面積は、n 番目の図形の面積の極限値として定義できること、そして、その値は最初の正三角形の面積の1.6倍(2/5 ÷ 1/4)であることが確かめられました。

コッホ曲線を作る操作から分かるとおり、コッホ雪片の外周は至る所でギザギザしており、周長は無限大です。それでもコッホ雪片の内部の面積は、ある値を超えることはなくて、極限値として定義できる。元・水の分析屋さんとしては、ちょっとした感動があるんですが、お読みになった皆さんはいかがですか。

 

中身がスカスカの図形

コッホ雪片は、元の正三角形からジワジワと外側にはみ出していくイメージでした。今度は、元の正三角形から中身を次々に抜き取ってできる図形を紹介します。

拡大図みたいなのも、途中の近似図に過ぎません

これは「シェルピンスキー・ガスケット Sierpinski gasket」と呼ばれる図形。やはり無限回の操作で作られる図形です。

 (1) スタートは内部も含めた正三角形
 (2) 各辺の中点を互いに結んでできる正三角形を抜き取る
 (3) 残ったそれぞれの正三角形に対して (2) の操作を行う
 (4) 上の操作を無限に繰り返す

一回の操作で元の正三角形の 1/4 が抜き取られ、面積は 3/4 になります。これが無限回続くのだから、当然こうなります:

あ!?

念のため繰り返しますが、上に示した図は、シェルピンスキー・ガスケットの近似図です。何となく面積がありそうに見えますが、無限回の操作の後の図は描けません。そりゃあそうだ、面積は 0 なのですから。

一方、図形の周長はどうなっているでしょう。一回の操作で元の正三角形の 1/2 の周長をもつ正三角形が 3つできますから、周長は 3/2 倍(1 よりも大)になります。これを無限回繰り返すので、コッホ雪片と同様、周長は無限大です。周長無限大で面積ゼロ。ジワジワきますね~

 

「線」ではない、「面」になってない・・・

私たちがよく知っている「線」ならば、たとえくねくね曲がっていても、細かい線分をつないだ折れ線で近似できそう。どんどん細かく区切っていけば、極限で元の線の長さが得られるような気がします。しかし、コッホ雪片やシェルピンスキー・ガスケットを作っている「線」は、連続しているけれども至る所で滑らかではない。その長さは無限大です。

また、正三角形からシェルピンスキー・ガスケットを作る過程をたどると、どのステップでも(縮小しながらも)必ず面積があるのに、無限回の操作でできあがる図形の面積は 0 です。でも、周長は無限大です・・・・・・ どうやら、「線」ではないけれど、「面」を作るには至っていない 、「線」から若干「にじみ出した」ような広がりがあるのではなかろうか。

 

私たちはふつう、「線」は1次元、「面」は2次元、と思っていますが、「線」と「面」の間の状態を考えてみるのも面白いかと。次回はそのような話をしたいですね。