alchemist_380 のひとりごと

元・水の分析屋さんがブツブツ言います

【数学】なんと素敵なフラクタル (1)

おっちゃんの暴走が止まりません。ハーバード大学は潰してやろうという勢いだし、南アで白人迫害が行われている「証拠」とやらは大間違いだったようだし。EU からの輸入品に6月1日から 50%の関税を課すことを勧告すると「自身のソーシャルメディアに投稿」したそうですし。

ホワイトハウス公式は、もはや、おっちゃんの決めたこと(ほざいてしまったこと)を追認するだけになっているのではないか。わが国にも実力者とか呼ばれる同類が多々いますが、排除されなくてはいけない「老害」だとしか思えないのです。

元・水の分析屋さんも立派な昭和生まれなので、老害にならないように注意したいと思っています・・・思っていますからね。

 

まだ教科書さえなかった

さて、元・水の分析屋さんの若かりし頃のことです(あんたにもあったのか・・・なんて言わないでください)。突如としてナイスなアイディアがひらめいちゃったことがあります(再びですが、そんなことあるのか、とか言わないでください)。それは、空間的あるいは時間的に等間隔で並ぶデータの列を折れ線グラフで表現して、「グラフの(図形的な)複雑さ」みたいな量を評価できないか、というものです。

最初にやってみたのは、衛星で観測された海面水温場。もちろん、面的な水温場が見えているのですが、たとえば、海洋前線の場所は、目で見て「このへん」としか言えません。もちろん、違う人が見れば「このへん」は違ってしまいます。つまり、客観的な解析になり得ないのです。

モヤモヤしていて、等温線も前線も・・・「線」は引けそうにありませんが

一例ですが、上に「JAXA ひまわりモニタ」から得た、2025年4月の平均海面水温分布図を示しました。もちろん、等温線はありません(引けないから)。 で、「このへん」に等温線を引くために、衛星画像で観察される最小単位(ピクセル)よりも広がりが大きい格子(グリッド)に水温の値を与えます。グリッドの値は、多数のピクセルの値を平均したもの、と考えていただければ、だいたい合ってます(i)

(i) JAXA ひまわりモニタの空間分解能(ピクセルの大きさ)は 2km。下の図のもとになるグリッドの間隔は緯度経度の 0.1度間隔。経度の 0.1度はほぼ 11.1km です。それならどうにか等温線が引けます。

4月中旬の平均海面水温、しっかり等温線が引かれています

グリッドの値であれば、上のように「このへん」に「等値線(等温線)」を引くことができます。これなら、海洋前線の場所を「t ℃の等温線」のように定義できそうです。

しかし、上の図、細かすぎるところも目立っています。津軽半島から西の方へと 10℃の等温線をたどって見てください。40°N 線と交差したあたりから、ゴタゴタした部分があることにお気づきでしょう。地上天気図でお馴染みの前線や等圧線の滑らかさには遠く及びません。そうです。海面水温場を観察するとき、これ以上グリッド間隔を細かくしてしまうと、「このへん」が細かすぎて、等値線がぐちゃぐちゃのモヤモヤになってしまい、視覚的に分かるような「線」は引けなくなるのです。

若き日の元・水の分析屋さんは、衛星画像による海面水温場には「フラクタル」の性質があると気付きます。しかし、時代はまだ昭和50年代前半です。「フラクタル」や「カオス系」を学ぶことができる教科書はなかったのですが、たとえば、ある線に沿った水温を折れ線グラフで表現すれば、グラフの「複雑さ」の評価が、その線と交差する海洋前線の位置を解析するのに使えるのではないか、と思い至ったのです。

 

フラクタル的な、余りにフラクタル的な(ii)

(ii) わたくし、ニーチェじゃないですし、芥川龍之介でもありません・・・の見出し(笑:必要と感じたらググってくださいね)。

 

さて、「フラクタル fractal」は、フランスの数学者ブノワ・マンデルブロが導入した概念(iii)。一言で言えば「自己相似性」をもつ幾何学的構造=「細部の拡大図が全体図と似ている」構造と言えると思います。

(iii) Mandelbrot (1967) : How long is the coast of Britain?, Science: 156, 1967, 636-638. という、「Science」誌に掲載された論文が初出のはずです。このタイトルを和訳すると「ブリテン島の海岸線の長さはどれほどだろうか?」。副題は Statistical self-similarity and fractional dimension。「統計的な自己相似性とフラクタル次元」となっていました。

 

たとえば、こんなヤツ:

カリフラワーの仲間のロマネスコ

もちろん、ブロッコリーも同様。

シダの葉もそうです:

枝なのか葉なのか

 

ここまでの二例は植物でしたが、次はメグミルク、じゃない、雪の結晶です:

規則性がはっきりした結晶ですが、細部と拡大図に共通する構造がみえます

次は、メレンゲでもソフトクリームでもない。発達中の積雲:

どこをとってもモコモコしています

というところで、こういう構造は自然界に遍在していると言って間違いないでしょう。

 

さて、事例が少なくて申し訳ないですが、小さな基本形を拡大すると全体の形に似ているのが「フラクタル的」性質です。面白いことに、フラクタルを見ると、脳の前頭葉に何らかの刺激が与えられるという研究があります。フラクタル的な図形を見ると、心に安らぎを覚えるとか、若干ザワザワするとか、何かが起こるのだそうです。

そう言われてみると、元・水の分析屋さんが海面水温場にフラクタルを感じたときも、脳内に何かが湧き上がってきたような気持ちになりました。自然現象を研究対象にしている研究者さんたち、研究対象に潜むフラクタルからどんな心理的影響を受けているのでしょうか。

 

完全無欠なフラクタルの例

自然界に遍在するフラクタル的構造は、われわれが肉眼で観察できる範囲のもの。ロマネスコでもブロッコリーでもシダの葉でも、雪の結晶でも積雲のセルでも、最小の基本形が分子レベルより小さくなることなどあり得ません。無限に大きくしたり無限に小さくしたりしたければ、これは数学分野で扱う対象としたものです。

まずは、有名な「コッホ曲線」を紹介しましょう。1904年にスウェーデンの数学者ヘルゲ・フォン・コッホ Helge von Koch(von ですから貴族のご出身)が考案したものです。作り方の規則は簡単。「線分を3等分して中央部を正三角形の2辺で置き換える」だけの簡単なお仕事です。しかし、この操作を無限回繰り返すと、全体と部分が相似な「自己相似図形」が描かれることになります。

素粒子の大きさも気にせず、操作を無限に続けるのです

ここで落ち着いて考えましょう。「線分を3等分して中央部を正三角形の2辺で置き換える」のですから、一度の操作で線分の長さは 4/3 倍になります。そして、4/3 > 1 ですから、この操作を n 回繰り返してできあがる「線」の長さは (4/3)n。無限回繰り返せば、→ ∞ になりますね。また、どんな小さい「部分」をもってきても、必ず全体像と同じ構造になっています。大きな字で書いておきますが、

全体像と部分とが相似になっていて見分けがつかない。

これが「フラクタル」です。

 

ついでに。正三角形の各辺についてコッホ曲線を作る無限回の操作を施したらどうなるでしょう。できあがりは「コッホ雪片」と呼ばれる図形です:

周の長さは ∞ になりますが、面積は有限値に収束します

上で述べたように、コッホ曲線の長さは ∞ になりますが、コッホ曲線で囲まれたコッホ雪片の面積は、おおよそ発散しそうな気がしません。見た感じだけで何らかの値に収束しそうです。実際それで正解なのですが、元・水の分析屋さん、ここでいいところを見せようと思いますので、コッホ雪片に囲まれた図形の面積(極限値で定義できますね!)を求めましょう、という宿題を出しておきます。

 

では、次回にご期待を。