alchemist_380 のひとりごと

元・水の分析屋さんがブツブツ言います

【化学】「健康のためなら死んでもいい」・・・違うか~

台所から煮魚のいい匂いがしてきました。今日、妻がゲットした麗しの食材。今は落とし蓋をして弱火でぐつぐつ・・・の工程に入っているはずです・・・

 

元・水の分析屋さん、現役の勤め人時代には10年以上の単身生活を経験しております。料理だってそこそこやっていたのですが、ネット上で飛び交う「体に悪い料理」の情報にはあきれていました。ジャガイモの芽は食べちゃダメだとか、豚肉はよく火を通して食べなさいとか、そんなの常識だぃ!っていうまともな情報に紛れて、〇〇には発がん性物質が含まれているとか、××は体内で酸性になるのでアルカリ性の食品で中和しましょうとか、信じてしまうと食べられるものがなくなりそうな話がいっぱいです。

 

〇 魚を炙ると、発ガン性および変異原性のある「ヘテロサイクリックアミン」が生成される。焦げた皮は取り除いて食べましょう。

〇 牛肉は強い酸性の食品なので、その100グラム分を中和するには、キュウリなら900グラム必要(でも、梅干しだと数グラムで足りますよ~)。

〇 毎日の食事でできるだけ野菜や果物を摂取するよう心がけ、飲み水も中性~アルカリ性のミネラルウォーターを飲むように。コーヒー、お茶、炭酸飲料は酸性だから避けましょう。

 

かましいわぃ! わしは昭和生まれの次男坊じゃぁ。長男には白いメシでも、次男には焦げの入ったメシ(i)。食べられるだけで御の字なんじゃ。魚の皮が焦げたくらいでガタガタ言うな。それに、キュウリばっかり900グラム食えるわけないじゃろうが。バカたれが! カバチよ(ii)! エエカゲンにせぇ! 梅干し食べたりレモンをかじったりくらい、言われんでもやっちょるわ。 (不適切な悪態のつき放題です)

(i) 男二人兄弟でさえこのくらいの差は当たり前。これが三人兄弟だと、長男・次男・三男=上男・中男・下男の扱いになってしまいます。これぞ美しい日本、昭和ですよ、昭和。明治・大正のことは知りませんよ。

(ii) カバチとは、 つまらない・くだらない文句。減らず口。分をわきまえない偉そうな口のきき方。あたまにカチンとくるへ理屈。中国地方でよく使われますが、特に広島弁として有名なようです。

 

え~、わたくし、オッサン生活を満喫していますが、野菜・果物は好んで食べる方。食生活をあれこれ言われたくはないですね~。炭酸といえばビールに限りますし、コーヒーは毎日 2杯が必要です! だいたいね、ペットボトルのミネラルウォーターを買うなんて、地球環境にもフトコロ具合にも悪いとしたものですがね! (捨てゼリフです)

 

それはさておき、今日の煮魚は問題ないよね・・・いえいえ、結構な量の砂糖が使われていたり、醤油味が濃かったりするので、やはり注意しなくてはいけないそうです。こんなの真に受けてたら、カスミでも喰って生活するしかない。「健康のためなら死んでもいい」なんて、本気で思っているわけではないですが、「おいしいものは健康には悪い」くらいのレベルで理解したいと思います。 ああ、ブツブツ。

 

おお、そこそこ強そうな名前!

先日、「Science Portal」で「カテキンとビタミン E を組み合わせた強い抗酸化物質合成に成功」という記事を見つけました。どれどれ、オジサンにも見せてごらん・・・大学プレスセンターに飛んでみたら、昭和大学量子科学技術研究開発機構が共同で「緑茶由来のカテキンとビタミン E 類似体トロロックス(i) を結合させた新規抗酸化物質を開発」したとのこと。皆さんも、カテキンはもちろんのこと、トロロックスだって小耳にはさんだことくらいはあるんじゃないですか?

(i) トロロックスですよ。トトロックスじゃないですから。ネコバス、行きませんから。“Trolox...”  くいんとりっくす系ですかね~

「天然抗酸化水」が販売されています

アマゾンで探したら 500mL × 24 本、¥2,160.- で出ています。よくよく見ると、pH 9.7 と表示されていますね。酸性雨を「レモン果汁のような雨」と評するサイトがよくありますが、そのレベルに合わせてあげれば、重曹とか石けん水並のアルカリ性です。それでもお取り寄せして飲みますか? 飲むか飲まないかは、あなた次第ですが。

で、もう一つのカテキン。こちらは世界一の色々な授業を受けたかった人ならお馴染みだろうと思いますが、あの有名なフラボノイドの一種。もっと広くいえば、ポリフェノールの仲間です。代表的な形のものを紹介します:

立体構造その他による異性体がありますが、いずれも「効果は抜群だ」らしいです

ごらんのように、トロロックスもカテキンも、いい感じの亀の甲をもっていて、元・水の分析屋さん的には「そこそこ強そうな」物質です。これらを結合させた抗酸化物質を開発したというのですから、これ、期待しない方がおかしいくらい(笑)。

 

なにぶん、ストレスフルな社会ですから

活性酸素の酸化力は強力で、体内で細菌やウィルスを撃退する役割を担っています。しかし、必要以上に増えすぎると、正常な細胞や遺伝子までも攻撃(酸化)してしまう。ふつう、体内に取り込んだ酸素の 2%程度が活性酸素になると言われますが、抗酸化酵素などによる防御システムが働いて、過剰な活性酸素を減らしてくれます。でも、年齢とともにそうした防御システムは弱ってくる・・・困ったものです。そういうことを心配して心理的なストレスが加わると血流が悪くなって、元に戻ろうとするところで活性酸素が発生するとも言われています。元・水の分析屋さんも、加齢によって活性酸素から受ける「酸化ストレス」は強まっているのだろうと思います。

「酸化ストレス」は老化を加速させるだけでなく、がん、心疾患、脳障害、アルツハイマー病など、さまざまな病気の原因になるであろうことが知られています(一応、言いきらないことにしますね)。悪者は酸素(ちゃんと言うと活性酸素、もっと言うとフリーラジカル)。そうした原因物質を除去するのに役立つのが「抗酸化作用」をもつ物質です。

カテキンは、フリーラジカルを抑制する自然由来の抗酸化物質で、緑茶に豊富に含まれる。一方のトロロックスは、細胞膜の脂質を保護する水溶性ビタミン E 誘導体。フリーラジカルによる細胞損傷を防ぎます。両者をうまいこと合体させれば、より強い抗酸化作用をもつ物質が得られるであろうと考えるのは当然かも知れないです。

昭和大の研究チームは、カテキンの立体構造を平面状に固定した「プラナーカテキンPCat」と「トロロックス TrOH」を結合させて、新しい分子 PCat-TrOH を合成することに成功しました! っていうニュースだったのですね。

“Green Tea Meets Vitamin E in a Powerful Health Breakthrough” より

なるほど、上図左下の トコフェロール Tocopherol がビタミン E で、その右側の長い直鎖が取れたトロロックスが PCat-TrOH にくっついています。取れちゃった直鎖の行方も気になりますが、それはおいといて。

この成果は、もちろん、上に上げた様々な疾患の予防や治療に役立つことが期待されます。もしかしたら、近いうちにサプリメントができて、ドラッグストアに並ぶようになるかもしれませんよ。pH 9.7 の水よりはよっぽど信頼できそうな気がしますね。ただ、値段は・・・知らんけど。

 

最後になりますが、「酸化ストレス」を増大させる大きな要因の一つは喫煙です。タバコの煙には活性酸素そのものだけでなく、その発生を助長する有害物質が数多く含まれています。ガス成分としては一酸化炭素、窒素酸化物、アンモニア、ニトロソアミン、シアン化水素、硫黄化合物、炭化水素アルデヒド類、ケトン類。粒子成分は水、ニコチン、タール。タール中に、発がん性のある種々の多環状芳香族炭化水素、フェノール、ベンゼン、ナフタリン、各種の金属イオン。

そして、有害物質は主流煙(喫煙者自身が吸う煙)より副流煙(タバコの先から出ている煙)のほうに多く、主流煙は酸性(pH 6前後)だが副流煙アルカリ性(pH 9前後)で目や鼻の粘膜を刺激します(Smoke gets in your Eyes, 煙が目に染みる・・・です)。タバコの煙(副流煙プラスあんたが吐いた煙)を周囲の人に吸わせてしまうのは、傷害罪にあたるだろうというのは、決して大げさではないのですよ。

もうちょっと脅しておきますと、タバコの葉にとても素敵な放射性物質が含まれています。2006年、元ロシア連邦保安庁職員のアレクサンドル・リトビネンコが死亡した事件をご記憶ではありませんか? ポロニウム-210 という、α線しか出さない核種を寿司に仕込まれたといいます。ポロニウム-210 を 35ng(ナノグラム;10-9 グラム)ほど体内に取り込むと、たちまち死に至るレベルの被ばく量 7 Sv(シーベルト)になるそうです。ちなみに、1日20本のタバコを吸う人の被ばく量は年間で 190 μSv と試算されています。

あわててサーヴェイメータをもってきてチェックしようとしても無駄。γ線は出ないので検出できません。 それでも、タバコ、吸いますか、吸いませんか。