『老子』 第十八章:
大道廢、有仁義。智慧出、有大僞。六親不和、有孝慈。國家昏亂、有忠臣。
大道廢れて仁義あり。智慧出でて大僞あり。六親(りくしん)和せずして孝慈あり。國家昏亂して忠臣あり。
大道が失われて道徳的な概念が生まれる。変な知恵が出てきて、甚だしい偽りが行われる。親子・兄弟姉妹・夫婦の仲が睦まじくなくなり、孝行・慈愛という考え方が必要になる。国家が混乱して、忠義を尽くす臣下が現れる。
老子らしい逆説的表現ですが、私たちの周囲を観察すれば「なるほど~」と感じられるはずです。
性善説的な考えでは安心して暮らせない世の中、覚えきれないほどの事細かなルールが作られている。これはよいアイディア、すばらしい新製品、だったはずなのに、すぐさまそれらを悪用する輩が湧き出してくる。家族・親族の間にまでもめ事がやたらと多くなっているが、その一方で、夫婦同姓という制度が「家族の一体感」を生むだけではなく、「社会の安定性」を保つのにも役立つという、想像の斜め上までぶっ飛んだ理屈をひねり出す人たちが元気になる。で、ここまでおかしくなると、まともなことを主張している人が却って目立ってくる・・・
マーフィーの法則の中に「物事が順調なのは、いつかおかしくなるためである」というのがありましたが、いろいろと順調だった時代はとうの昔に終わっているような気がしています。グレシャムの法則「悪貨は良貨を駆逐する」は、貨幣以外のたいていのものにも当てはまります(i)。
(i) どんな組織も大きくなってしまうと、ダメダメな人でも何とか務まる(でないと、維持するのが大変になってしまう)。そうこうしているうちに、何とか務まっただけの人も立派にやり遂げたみたいになる。それをヨイショしとけば、自分も OK だと気付く程度のオツムはある連中があとに続く・・・以下、同様に繰り返す。 これ、行政組織におけるあらゆる段階の管理者に当てはまりそうですし、選挙で選ばれた公務員のみなさんだって大半の方はそんなもんでしょ・・・おい、それは違うよ、って言ってくれ。
インチキくさい級数の和
高校の数学で習う「等比級数の和」を扱いましょう。まずは公式の作り方です。

思い出しましたか? で、ここで x=2 とすれば、「1+2+4+8+・・・ = -1」が現れるじゃあないですか。2の n 乗(n=0, 1, 2 ...)という正の数を無限に加えた総和が -1 だなんて、納得がいかないです。また、x=-1 としてやると「1-1+1-1+・・・ = 1/2」になります。
いやいや、上で S とおいた級数の和は | x | < 1 でないと求めちゃダメなヤツ・・・そんな心の狭いことを考えてはいけません。いつぞや扱ったバーゼル問題、いきなり π が出てきて面食らったものですが・・・

sin x の零点を用いて怪しくも妖しい「因数分解」みたいなことをしましたよね。ここでも変数 x のあるべき範囲を逸脱するというお楽しみを許していただきたいです。ある意味、有意義なルール違反ですから。
さて、興味のおもむくままに、無限級数の和の話に戻りますが、有名な「ゼータ函数」について。こんなやつです:

こいつは s >1 のときに収束します(s が複素数でもいいので、より正確には s の実部が>1 のとき)。s = 2 の場合は上のバーゼル問題になりますが、\(・_\)それは(/_・)/おいといて、収束しないはずの s = -1 を放り込むと・・・

これは、加えていく項が増大しているので、第 n 項までの和 Sn は n→ ∞ とすれば当然発散します。しかし、各項を交互に足したり引いたりすると、プラス・マイナスを行き来するようになります。

この交項級数は、発散するにしても自然数の総和よりは「ゆっくり」だと思われます。実際、何ともうまいことに「1/( x+1 )2」を形式的にべき級数展開した式に x=1 を代入したものになっております(ii)。よって、A = 1/4 です。
(ii) 複素函数の演習なんかで出てきますが、まあ、ここは怪しい話のままでスルーしてください。
さて、「(S≡)1+2+3+4+5+・・・」を A の交項級数にアジャストするには、奇数番目の項はそのままに、偶数番目の項は 2倍して引けばよい。つまり、2 から 4 を引き、4 から 8 を引き、6 から 12 を引き・・・って続ければいい。そうすると、

無限に続く計算ならではの不思議。直観的に認めがたいだろうとは思いますが、話の筋道は通っていますよね。だったらこれでいいじゃないですか。

二次方程式 x2 + 1 = 0 には解がない、で済ませていたら、そこで終了です。√(-1) ≡ i を受け入れることから、美しく、面白い、複素数の豊かな世界が見えてきました。無限級数の「和」の扱いでも、「収束条件」というルールを無視してみたら、インチキくさい割りにずいぶんと整合性のとれた世界が広がっていそうです。