「炎上」の話題には、しばしば自作自演などのインチキが見え隠れしますが:
一部で “性的” と炎上…「赤いきつね」CMに料理研究家「炎上覚悟で言わせて貰うと…」 持論に共感の声 (ENCOUNT の意見)
「『不快に思う人を尊重しろ!』って言ってる方」へメッセージ
一部で東洋水産のカップ麺「マルちゃん」のCMが炎上していることを受け、料理研究家のリュウジ氏が17日、自身のXを更新。「全く性的に見えない」と持論を展開した。
人気声優の市ノ瀬加那が演じる女性キャラクターが自宅で赤いきつねをすする約30秒のCM映像。これが一部ユーザーから「性的で気持ち悪い」「何だよ、この頬を赤らめた女がクネクネするCMは」などの声が上がっていた。
こうした状況を受け、リュウジ氏は「このアニメが性的だと話題らしいけど 炎上覚悟で言わせて貰うと一昔前のグルメ漫画で育ったから頬を染めて食うのはデフォルトだし全く性的に見えない なんならいつ服が破れて口からビームが出るのかと思った」と真っ向から反論した。
さらに続くポストでは「これに『不快に思う人を尊重しろ!』って言ってる方、この動画を作ってるクリエイターの気持ちは尊重しないのだろうか 僕は同じクリエイターとして良いと思って世に出した作品が意図せず文句を言われたら悲しい どう考えても今回の件で一番辛い思いをしてるのはクリエイターだと思う」と自らの思いを記した。
これに「私も性的な要素は感じません」「自分も思っていました。近頃過剰な反応が多い気がします」「全くもって同意見」「暖かいものを食べて体温上昇した結果ほほが赤らむ、って普通のことだと思うがどこに性的あるねん?」などと共感する声が寄せられている。 ENCOUNT編集部
元・水の分析屋さんは、動画で勧めてくれるレシピ・食べ物がうまいので(あっ、関係ないか・・・)、リュウジさんの考えに大賛成です。
そもそも、CMがそんなに不快なら、テレビ消すかチャンネル切り替えればいいだけのことだと思います。そして、細部までよっくよく見まわして、十分すぎるくらい観察してからイチャモンつけるなんて、よほどのヒマ人か、もはや死語かもしれない自宅警備員に違いないと思います。ほかの面白そうな情報から遮断された環境にいるせいだとしたら、Wi-Fi つながりやすくすればいいと思います。こんな形で他人を攻撃していないと物理的な破壊行動などに走るようなタイプなのでしたら、心理カウンセラーさんに相談することをお勧めしたいと思います。もしかしてだけど、全身〇感帯というヘンなカラダの持ち主なのでしたら、別なカミングアウトの方法もあるだろうにと思います。
不快に思う人を尊重するべきだとおっしゃる皆さんは、上のように思った私のことも、もちろん尊重してくださるのでしょうね。また、「性的で気持ち悪い」なんて訴えちゃった人、とりあえず、あなたの頭のネジ、締めときますか? わたくしの意見です。
化学の教科書を変える発見か
買ったまま放置していた日経サイエンスの3月号、パラパラってめくると、常識外れの弱すぎる共有結合、という見出しが目にとまりました。たった 1つの電子で炭素原子同士をつなぐ共有結合が見つかった、というのです。
論文は Nature 2024, 634, 347-351. に掲載されています(2024/09/26 公開:Shimajiri et al., 2024)。元気がある人はそちらをお読みください。昨年秋のネタに今頃やっと気付いた元・水の分析屋さんは、プレスリリースその他の和文の資料を参考にして書くことにします。
「共有結合」は、1916年にルイス Gilbert Newton Lewis によって提唱された、化学の根幹をなす極めて重要な概念です。共有結合は、二つの原子が互いに価電子を出し合って、原子間で「二つの電子=電子対」を(いくつか)共有することで形成される、とか何とか、高校生の化学で教わります。
共有結合は、結合の本数=電子対の数によって分類されます。価電子が4コの炭素原子の場合、ふつうの共有結合は、単結合、二重結合、三重結合の3種類。電子の沼に足を踏み入れてくださった方なら、そのようにして「オクテット則」を満たすという説明で理解できるはずです。
しかし、化学結合に関する研究でノーベル賞を受賞したポーリング Linus Carl Pauling は、1931年に電子対ではなく一つの電子を原子間で共有する「一電子結合」の存在を提唱しました。それ以降、その存在の実証を目指して多くの研究が行われてきましたが、リン、ホウ素、一部の金属原子でわずかに見られたものの、これまで炭素原子間でその存在を結晶学的に実証した例はありませんでした。一電子結合は極めて弱い結合であることから、有機化合物の骨格を形成する炭素原子間での合成は極めて困難と考えられていました。そんな中、2018年に標準的な炭素原子間の単結合の長さ 1.54 Å を17%上回る 1.806 Å という「最も長い C-C 単結合」が達成されました(Ishigaki et al., 2018)。この長~い結合から首尾よく電子を1つだけ抜き取ることができれば・・・

※ 最下段の「1.806 Å 」は「最も長い C-C 単結合」の長さで「→ 2.921 Å」が実現した「一電子結合」の長さです。なお、その右側の sp3, sp2, sp などは電子の混成軌道を示しています。元・水の分析屋さんの場合・・・昭和50年代前半には「化学Ⅱ」の教科書に出てました。
昨年秋の Nature 論文は、上の考え方に沿って炭素原子間に一電子結合を形成した単結晶を用いた実験によって確認したものです。下図の左側の「長い C-C 単結合」がとても強そうな(化け屋さんたちは「かさ高い」と表現するヤツ)六角形が並んだ構造で囲むことにより保護された形の化合物を合成。100℃を超える高温下でも壊れず、溶液中でも大気中でも安定して存在しました。この化合物の単結合から1つ電子を奪って(酸化して)、右側のような一電子結合に変えるという戦略を立てたのです。報告された結果は C-C 間の距離は 2.921 Å で、炭素原子の間に1つだけ結合電子を確認できました。
これは、ポーリング以降の約100 年に及ぶ化学者の挑戦に当面の終止符を打つものであり、化学結合の理解の深化に大きく寄与すると言えるでしょう。従来は「電子対を共有」することが共有結合の定義と言えましたが、原子間で「電子を共有」すること、のように、教科書の記述も変わる可能性があるわけです。

まだ「ホンマでっか!?」って思うかも知れないので説明を追加。
炭素原子の大きさを示すファンデルワールス半径は 1.7 Åです。炭素原子の間隔がその2倍の 3.4 Å よりも短いということは、原子が互いに「食い込んでいる」状態。何らかの力が働いて「結合」していると考えざるをえないのです。
シェヒトマンが 5回対称軸をもつ「準結晶」の研究でノーベル賞を受賞したとき(2011年)にも、なんじゃそれは(俺の知っている結晶の理論ではない)でしたが、この一電子結合も、オクテット則の話はどこに行った、で、クリビツテンギョ(i)イタオドロ状態です。
若い頃身につけた知識が覆されていくのは残念ではありますが、これは科学・技術の進歩です。この先ますます楽しみだと喜ばないと。「イイクニ作ろう鎌倉幕府」だって通用しないのですから、まあ、いいじゃないですか。
(i) 2012年~16年に走っていたお馬さんの名前です(特別戦まで・・・でしたか)。ビックリ仰天おどろいた、から。