alchemist_380 のひとりごと

元・水の分析屋さんがブツブツ言います

フグ毒騒動、暖水塊

【中京テレビニュース 1/4】

愛知県によりますと、1月2日に安城市の「イトーヨーカドー安城店」で、「しらす干し」のパックを購入した客から、フグのようなものが混入していたと連絡がありました。見つかったのは体長2センチほどのフグの稚魚とみられ、店に連絡した客は食べていないということです。

運営するイトーヨーカ堂は、他のパックにも混入の疑いがあることから2日に販売した41パックの自主回収を届け出ました。今のところ健康被害の報告はないということです。愛知県は、購入した人は、絶対に食べずに店に連絡するよう呼びかけています。

 

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新年早々、フグ毒騒動です

あの有名なフグ毒は「テトロドトキシン tetrodotoxin (TTX)」。名前は生物分類「フグ科 Tetraodontidae」に由来しているそうなので、フグには上下2本ずつ、4本の歯があることまで遡ることができるってことになります。へぇ~。

フグ毒の化学構造式

 

それはともかく、経口摂取による毒性は青酸カリの数百倍という強力な毒です。フグのすべてではないのですが、肉・内臓・卵巣などに、エサとするヒトデやゴカイ、貝類などに含まれる TTX を蓄積するものがいるので、見分け方も調理法も知らない人が食すると・・・年間数十人が犠牲になっているとか。一部には、フグ毒も加熱してしまえば大丈夫と考えている人もいるようですが、TTX は 2-300℃になっても分解しません。水溶性でもないので、水にさらしておけば・・・というのも眉唾と思った方がよいです。フグが「鉄砲」と呼ばれるのは「当たったら死ぬ」からですし、「キタマクラ」と呼ばれるフグもいます(i)。皮膚の粘膜にも毒があるそうなので、これは触るのさえ避けた方がいい。また、フグの卵巣の糠漬けを珍味と称して好む方も多いようですが、どうして糠漬けだと毒性が低下するのかはよく分かってはいないそうです。

(i) TTX の毒性の強さは「青酸カリの850倍」という記述をよく見かけます。きっとそれが正しいのでしょう。フグ毒の強さを表す単位は MU(マウスユニット)です。1 MU は体重 20gのマウスが 30分で死亡する毒量(動物虐待とかの話はしません)。 大人一人分の最小致死量は 10,000MUと推定されています。致死量を摂取すれば、北向きに寝かせてもらうことになるでしょう(それでキタマクラです)。さらにいらんことですが、頭を北に向けて右の脇を下にすれば顔は西向き。畏れ多くもお釈迦様入滅のスタイルになります。

それでもおいしいと言ってフグを食する人は後を絶ちません(笑)。

「あら何ともなや きのふは過ぎて ふくと汁」(芭蕉

人間って、ホントに業が深いものですね(爆笑)。

 

おっと、安心情報を書くのを忘れるところでした。フグは成長過程で TTXを蓄積するわけですから、卵の段階で毒をもっていなければ、種類や地域、季節による差はあるでしょうが、稚魚にそれほどの毒はないはず。「魚介製品へのフグ種の混入事例について (大阪市立環科研報告 平成 25 年度 第 76 集,25-28, 2014)」とか、「しらす加工品に混入したフグ稚魚の種判別と毒性(食品衛生学雑誌,Vol. 57, No. 1, 13-18, 2016)」とか、いくつかの文献を見ましたが、測定データを見る限り、フグの稚魚の毒量は 1ng程度と極めて微量。そればっかりを選んで一気に食べるのでもなければ、危険というような話ではありません。公的機関の見解としては、安全だと言いきることができない、それだけのことじゃないでしょうか。

もちろんのことですが、購入した商品にフグみたいなのが混じっていたよと知らせてくれた人は、万一の事態に備えて危険性を評価するための情報を提供してくれたのだと考えなくてはいけません。そうでないと、あの「トリチウム水」の β線を必要以上に恐れてしまったのと同じことを繰り返すことになるでしょう。

しらす干し」のパックにフグの稚魚が混入するかどうか、そこに 100%の安全性を求めてしまうと、点検のために人の目、機械の目、そして時間を要してしまいます。どれだけの経費がかかるか、想像してください。スーパーで売っているしらす干し、高い金を払って食べるようなものになっては困るのです。消費者が購入する時、調理する前、あるいは食べる前に、「見つけたらやめておく/取り除く」で済むことではないかと、元・水の分析屋さんは考えます。そんなの納得できないとおっしゃるなら、絶対に購入したり食べたりしないでください。心配しないでどんどん食べろなんてことも、自主回収なんかするなってなことも、私は考えてもおりません。

♫すべては~心の~決めたま~まに~・・・でいきましょうね。

 

北海道南東方と三陸沖の暖水塊、その後

昨年12月、上・中・下旬の 200m深水温分布図を並べてみました。面白い変化ですね。

100m深ではなく、200m深をみております

北海道南東方の暖水塊、中心の水温がひと月の間に 3℃低下しています。暖水の補給はすっかり絶たれて、海面からの冷却による冬季鉛直混合が発達中、と思います。この1か月で、暖水塊がどれだけの熱量を失ったのか、ヒマがあったら見積もってやりたいのですが、へっぽこなおっちゃんが詳細なグリッドデータをもっているはずの人たちを差し置いてするほどのことではない(笑)。やらない言い訳にしておきますね。

一方、三陸沖の暖水塊は、少なくとも中旬までは黒潮続流からのエネルギー(暖水)補給があったように見えます(中心部のドーナツ状の水温分布は何を示唆しているのでしょう)。下旬になってもそれほどの水温低下はないようです。今後、これが東進するか北上するか。漁場の分布にも関わることだし、一番気になるのはそこか。

 

ま、フグ毒も暖水塊も、入試には出ないとは思いますが。