今日はまたフィボナッチ数列の話に戻すのですが、その前にちょっと。
気象庁による「旬平均表層水温」のページで100m深水温を見ていて、ふと思いつきました。30年前はどんな状態だったかな・・・ 黒潮域、11月上旬で比較してみましょう:

100m深水温が 25℃ を超える領域、1994年の図だと左下にちらっと見えているだけですが、今年(2024年)はずいぶん広がっています。海面水温であれば、晴天続きで日射量が多いとか、気温の高い日が続いたとか、そういうことがあれば上昇するとしたもの。しかし、今見ているのは、海面を通じたそうした熱のやりとりの直接影響が小さいはずの100m深水温です。1994年は、20世紀末とは言っても、アルゴフロートのように自動的にデータが得られる手段は乏しかったので、データ空白域を埋める方法によって違いが生じる可能性は否定しませんが、黒潮の流軸になっていそうなところで25℃ をバンバン超えているのを目の当たりにして、いささか驚いているのです。
100m深水温の30年差は、ほかの海域でも顕著に見られます。あっと驚くタメゴロー、で済むはずもなく、地球温暖化の一面、海洋への蓄熱量増大を観察しているのでしょうから、あまり気持ちのいいものではありません。
さて、気象庁のご担当さま:
「海洋の健康診断表」と名乗っているからには、現状このようである、を示すだけではなく、その現状をもたらしている原因(要因)についても説明が欲しいと思います。図に示されていることを、言葉で念入りに説明するのは・・・少なくとも、私の好みではありませんし、簡単に AI に置き換えられる作業であろうと思います。
フィボナッチ数列に「母函数」を応用してみる
数列 {an} (n=0, 1, 2, ...) が与えられたとき、数列の各項を係数とした形式的な冪(ベキ)級数

を考えて、その数列の「母函数」と呼ぶことがあります。フィボナッチ数列にもこれを応用してみましょう。

x=1 を代入した F(1) は、フィボナッチ数列の各項をすべて加えた無限和になります。前回 S=-1 になった、あの無限和です。半分インチキだったので、残りの半分の話を作ろうとしております。
前回は、フィボナッチ数列の無限和の式を、1項ずらしてから足してみたのですが、今度はもう少し高級な(笑)ことを試します。上で作った母函数の式から x倍、x2 倍した式を引いてみましょう。つまり・・・

フィボナッチ数列を定義した漸化式により、x2 以降の冪のところはきれいにキャンセルされます。母函数は x の無限次元までの冪級数でしたが、うまいこと分子が1次、分母が 2次の分数式で表現できました。
さて、フィボナッチ数列は単調増大する非負の整数項でできていますから、その無限和は当然ですが +∞ に発散します。母函数の F(x) で x=1 にした状況そのものです。ところが、上の分数式の表現で x=1 にすれば、あーら不思議、F(1) = -1 になるではありませんか。なので、フィボナッチ数列を足し合わせた無限和は、確かに -1 に等しい。Q.E.D.
残り半分の話もやはりインチキなのでしょうか?
何かが違う函数になっている・・・?
母函数の F(x) は x=1 を代入すると発散するのに、あれやらこれやらイジり倒してできたF(x) に x=1 を代入すると -1 になりました。おもしろいですね~ちゃんちゃん・・・
話をここでやめてしまうと、現状このようである、を述べただけに終わるかも・・・ですね。「チャカチャカチャン、チャカチャカチャン・・・ウーッ!」までやらなくてはいけないですね(2024/10/30 にアップした記事を参照)。元・水の分析屋さんまで AI に置き換えられるのは、さすがにどうかと思うので、どうしてこうなるのか、も少し考えましょう。
話を簡単に済ませるなら、そもそも母函数の F(x) が負の値をとるような x は函数の定義域から外れているに違いない。函数が定義されていない領域のことを考えても仕方ないのでは・・・なんですが、前回書いたとおり、「えっ、それでいいのか?」をアリにすることで、豊かな数の世界が広がってきたのです。フィボナッチ数列全部足すと -1 という与太話、これをちゃんと「アリ」にしようじゃないですか。
さっき「函数の定義域」と書きましたが、実数の範囲しか考えていませんでしたね。それが当たり前だと思っていましたが、変数を複素数にしてはいけないのでしょうか?

上の式だと x を z に書き換えただけですが、もちろん z は a+bi の形をした複素数で考えるのです。すると、複素数の値をとることができる F(z) は 1-z-z2 が 0 になる点を除く複素平面上の全領域で定義できる函数になります。そこに向かって何食わぬ顔をして z=1 (1+0i ということです)を放り込んでやると、めでたく F(1)=-1 が得られるというわけです。Q.E.D.
母函数は実函数で |x|<1 で収束するはずでしたが、複素函数の方は分母がゼロでなければ複素数値をもつ。形は同じですが違う函数になっているようです。今を去ること40ン年、N 先生にこってり絞られた複素関数論に出てくる「解析接続」です。試験さえなければ、こういうのって面白いですね。
フィボナッチ数列の話、もっとあります。