alchemist_380 のひとりごと

元・水の分析屋さんがブツブツ言います

0, 1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, ... の話 (1)

 

先日引用した「ゲティスバーグ演説」の一節:
... that we here highly resolve that these dead shall not have died in vain;
ここで ‘shall’ を使うんですね。「この死を無駄にするわけにはいかない」というニュアンス。そうかそうか。きっとヤツを殺してやる、は ‘He shall die’ でした。他者への強い意志を示す未来形、‘will’ じゃあ表現できないのでしょうね。

 

ところで、受験生の皆さんへ(マジメに受けとめてはダメ):
○ 私、英会話はできないけど ‘government of the people, by the people, for the people’ は覚えておりました。of, by, for の順、忘れるなよ。それと、for を高く(強く)読むこともね。仕事の役には立ってませんが、まあ、知っている方がよいでしょう。教養ってことで理解したいので、覚えろと強要することはいたしません。

○ 私達が子供の頃の地理のお勉強。オーストラリアの地図をみていたら、「大ジバイジング山脈」って書いてありました。ジバイジング? で、その西にあったのは「大鑽井盆地(だいさんせいぼんち)」。何で漢字なの? 「鑽井」が何か、も教えて欲しいのに賛成。

源氏物語は、初まりの「いづれの御時にか、女御、更衣あまたさぶらひたまひける中に、いとやむごとなき際にはあらぬが、すぐれて時めきたまふありけり」だけ覚えていました。でも、誰が何したと言っているのかはよく分からないままです。

平家物語も、初まりの「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり、沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。たけき者もつひには滅びぬ、ひとへに風の前の塵に同じ」だけ覚えていました。半端な知識なので、風の前の塵のようにどっかに飛び去っています。
徒然草に「言いたいことを言わないでガマンしているのは体に悪い」という意味の言葉があると聞いて、うっかり「王様の耳はロバの耳」を思い出してしまいました。「おぼしき事言はぬは腹ふくるるわざなれば」が正解ですが、当たらずといえど遠からじ、ではないでしょうか。試験では部分点ももらえないでしょうけど。

シェイクスピアの四大悲劇とは・・・「ハムレット」「オセロ」「リア王」「マクベス」。正解ですが、ほかにも有名な悲劇がありますよ・・・「ロミオ」と「ジュリエット」の二つです・・・数え方、インチキじゃないか。ついでなので、ギリシャの哲学者も「アリス」と「テレス」、二人に分けておきましょうか。
川端康成の「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」の「国境」は「くにざかい」と読みましょう。「こっきょう」と読むと、そこはロシアであってもおかしくないようにとられます。それはそれとして、ヒロインの駒子が、岩下志麻さんだったことだけ、なぜか知っています。
漢詩「江南春」の「千里鶯啼緑映紅」って、誰かさんが発と中をポンしたので、緑が紅に映えているのだと思っていました。大三元警戒で、頭の中が真っ白なんじゃないかな。賭けるかい? いや、麻雀で賭けてはいけません。

○ 0, 1, 1, 2, 3, 5, 8, 13 ...... これは「フィボナッチ数列」です。この数列の無限個の項を足し合わせてやると、もちろん無限大に発散するのですが、怪しげな操作によって -1 にもなります・・・・・・これを今回のネタにしましょう。

 

フィボナッチ数列とは

フィボナッチ数列は、「漸化式」で次のように定義されます。

各項がそれよりも前の項の函数になっているのが漸化式

an (n=0, 1, 2 ...)を具体的に書くと、0, 1, 1, 2, 3, 5, 8, 13 ...... です。各項は非負の整数で、n とともに単調増大ですから、無限和(S≡0+1+1+2+3+5+8+13+ ...... )は無限大に発散します。しかし、項をずらして加えてやると・・・・・・

赤い矢印を付けたところに注意

(1) はフィボナッチ数列の各項の和 S を定義した式。(2) は上の S の定義で最初の 0 を除いただけなので、その値は変わらないはずですね。そう、左に1項ずれただけです。で、(1), (2) を辺々加えて得られる (3) は、 左辺は 2S、右辺は (2) から最初の項 1 を除いた S-1 になりました。無限大に発散するはずの式を二つ足し算したのだから、値は2倍になるはずなのに、計算したら元の式より 1 小さいことになっちゃった、わけです。

納得したくない結論 S=-1 が得られました。Q.E.D. (笑)ちなみに、11月23日はフィボナッチ数列の日。数列の初めを a1=1, a2=1 にして、漸化式を n≧1 で考えればよいですね。

 

えっ、それでいいのか? をアリにすることで開ける世界

上の話は半分インチキです(残り半分は次回ということで)。似たような話はいくらでも作れますから。

簡単にやってみましょう:

初項 1,公差 0 の無限数列で無限和 T を作ると・・・

項をひとつずらして足し算すれば、たちまちおかしな式ができます。もっとおふざけを続けるなら、最後の '2T' に '1+2T' でも代入しますか。この操作を無限回繰り返すと・・・

すでに破綻しているおかしな式を繰り返し用いるところが破綻している

もうやりたい放題ですね。すでにおかしなことになっているのだから、さっさと立ち止まって考え直すべきでした。

では、こんなのはどうでしょう。

あのレオンハルト・オイラーも扱った例

「和と差の積の公式」の「和」の方、x の次数を n まで伸ばしてやります。これを展開すると、1, 2, 3,・・・ n 次の項はキャンセルされて 1-xn+1 が残ります。上の枠の最後の式は、n → ∞ のときに xn+1→ 0 であれば成り立ちます。もちろん、-1 < x < 1 という条件のもと、ってことになります。

ところが、そんな条件なんか忘れてしまうと、何だか面白いことが起こるんです。

○ x = -1 にしてみると

(左辺)= 1-1+1-1+1-1+・・・、(右辺)= 1/2

プラス1とマイナス1を繰り返す左辺は、途中で打ち切ると 1か0 のどちらかの値にしかなりません。でも、上の式を使うと、平均したのではないのに 1/2 が出てきます。

○ x = -2 を代入してみると

(左辺)= 1-2+4-8+16-32+・・・、(右辺)= 1/3

 

級数が収束するための条件を無視したために起こったことなのですが、こうなると、ただのインチキ話ではないような気がしてくるでしょう?

そもそも、マイナスの数を使えなかったら 3-7 の答はないし、分数を使えないと 3÷7 の答はない。平方して 2 になる数(√2)は分数では表現できなかったし、x2= -2  を満たす x は・・・。

そうです。「えっ、それでいいのか?」をアリにすることで、豊かな数の世界が広がってきたのです。フィボナッチ数列の話からはずいぶん離れてしまいましたが、元・水の分析屋さんのように、数学で身を立てるつもりはない人は、美しい話、面白い話を鑑賞して楽しむことにいたしましょう。

・・・というところで今日はおしまい。

次回は、フィボナッチ数列の話に戻りましょうね。