わが家のバラ、ファーストシーズンがピークを越えました。落ち着いたところで「青い」仲間からひとつ。

「ノヴァーリス」「青い」でググると、このバラがなぜ青いのかが理解できるはずです。どうぞ。
・・・・・・(検索に要する時間待ちです)・・・・・・
青いバラの沼へようこそ。ただ、「○○ブルー」という名称のバラはあまり青くありませんのでご注意。
ユンゲの関係 Junge relationship
前回再掲図まで出してしまったのですが、自分的には説明がまだ足らなかった(ムダ話がまだすんでいない、の意味です)のでもう一回(笑)。

時間スケール Temporal Scale は物質の「滞留時間 residence time」。定常的な状態を考えたとき、ある空間 space の中に(i)、注目する物質がとどまっている平均的な時間のことです。しばしばギリシャ文字 τ(タウ)で表され、物質の現存量 M を 単位時間あたりの空間への流入量 F で割って得られます。τ = M/F。当然、時間の次元をもちます。
(i) 大気の場合、接地境界層、対流圏、成層圏まで含む大気圏・・・などなどの広がりの中にとどまっている時間を考えることになります。
図に示されたような関係は、大気化学の基本みたいなもので、ユンゲの関係 Junge relationship と呼ばれます(ii)。ここまではそこそこ大切な知識に属すること。
(ii) Junge, C.E., 1974. Residence time and variability of tropospheric trace gases. Tellus XXVI, 4, 477-488. がネタの論文です。
ムダ知識の時間です
さて、ここからは図の中に出てきた物質についてムダ知識を。
比較的長寿命・・・に入っている C5H8 、こういうのはどこかに二重結合・三重結合が・・・と安易に書きましたが、炭素の骨格が輪っかになっている「環状化合物」という手もありました。実際にどんな面白い構造があるか、ご紹介と参りましょう。
二重結合が二つの例から:
イソプレン isoprene CH2=C(CH3)CH=CH2 (2-メチル-1,3-ブタジエン 2-Methyl-1,3-butadiene)・・・「ブタ」だと C 4つなので一瞬ためらいますが、メチル基の分もあるのでちゃんと C 5つです。
ピペリレン Piperylene CH2=CHCH=CHCH3 (1,3-ペンタジエン 1,3-Pentadiene)
三重結合の例は:
プロピルアセチレン Propylacetylene CH3CH2CH2C≡CH(1-Pentyne 1-ペンチン)・・・アセチレン HC≡CH の片方の水素 H が 長~い CH3CH2CH2- に置き換わっています。
環状構造をもつのはこちら:
シクロペンテン Cyclopentene, ハウサン Housane

「シクロ」は C の骨格が Cycle になっていることを表します。全部が単結合になっていれば H は10コになりますから、図ではあからさまにしていませんが、二重結合がどこかにあります。五角形の底辺を二重にした図をよくみかけますが、1か所だけあればどこでもいいのです。また、ハウサンは手が3本出ている二つの C に H が1コずつで、そのほかは2コずつ、単結合だけで合計8コ、計算が合います。ハウサンという名称は、C の骨格がおうちの形だからだそうです。考えてることがかわいいですね。こんな物質名を覚えてもしょうがないのに、忘れようとしても思い出せなくなります。
「化学的に安定」はありがたいことなのか
もうひとつ。図の中に登場する物質のいくつかは、気候汚染物質 Climate Pollutants と呼ばれます。表にまとめてみましょう。

気候への影響の欄の矢印は、上向きだと温暖化、下向きだと寒冷化の向きに働くという意味です。まあ、健康や生態系への影響のところには「×」ばっかりで「○」はありませんから、どれもこれも増やしていいというものではないと考えるべきです。
メタン CH4 よりも下の物質は、短寿命気候汚染物質 Short-Lived Climate Pollutants; SLCPs と総称されます。短寿命というのは、二酸化炭素 CO2 が数百年くらいの寿命と見られるので、それに比べれば・・・ということではありますが、ともかく、常にそれなりの濃度で大気中に存在しています。減らないのですから、発生源がある。増える傾向にあるなら、人為的な発生源がある。そういうことになります。
短寿命の範疇にある成分さえも減らせない。ましてや、CFCs をはじめとする長寿命の成分となると・・・推して知るべし。オゾン層破壊の問題は、CFCs に規制をかけてから半世紀近くしてようやく収束が期待できるようになりました。発生源を押さえることから考えないとダメなのです。
さて、ここしばらく大気中の化学成分の話ばかりしておりましたが、海洋に目を向けても同じようなことが起こっています。元・水の分析屋さんたちがまだ子供だったころ、日本では大気汚染だけでなく、水質汚濁も大きな社会問題になっていました。我々は、油や重金属で汚染された河川・水域と隣り合わせで生活しておりました。四日市ぜんそく、イタイイタイ病、水俣病、海岸に漂着するタール・・・「公害」です。これらについては、いろいろな環境政策の効果で、新たな問題は発生していないかのように見えます。
しかし、合成化学の世界ではありがたいと思われていた「化学的に安定」という性質に大きな落とし穴がありました。大気における CFCs と同じように、海洋におけるマイクロプラスチックの問題が顕在化しています。安価なうえに、さまざまな形状に加工できる。しかも化学的に安定なので長期にわたって使用可能。そう、使用可能まではよかったのかも知れません。砕けてもなくならないことに気付くのが遅かったようです。
プラスチック等の石油化学製品については、資源として再利用する仕組みが発達しつつあります。それ自体は好ましいことですが、私たちが利便性を求めてプラスチックを使おうとすれば、化学的に安定なプラスチックの総量は増加します。発生源、つまり、使用するために作る、ここを押さえないと解決にならないのです。
ペットボトル飲料、飲んだ後すすいで資源ゴミに出していますか? それで心安らかになるのは結構ですが、地中深くからとりだした化石燃料を石油化学製品にして、地表の環境中に出していること自体、厳しく言うならば、従来の使い捨てと大きな違いはありません。そこらあたりを自覚して、使用量を減らす向きの行動をとりましょう。
私だってお説教垂れるほどの者でもないですけど。